関根に話を聞くと
新しい土地を探していたということは、やはり道路整備の影響で現在の住まいを立ち退かなくてはならないのだろうか。2月下旬の昼下がり、麻里のマンションから出てきた関根を直撃した。突然のことに驚いた様子だったが、足を止め真摯に対応してくれた。
─ご自宅が、“立ち退き騒動”に巻き込まれていると伺ったのですが?
「いえいえ、そんなことないですよ」
─新しいお住まいを探しているとか?
「いや、ないです」
どうやら、立ち退く必要はないようだ。幹線道路の延伸先に自宅は入っていなかったのだろう。だが、道路の工事が始まることで自宅近くの環境が悪くなる可能性はある。その影響で引っ越すことはあるのだろうか。
「あ、リニアの件ですね。そうなんですよね、うちも近くに入っちゃってるから……」
関根は困ったような表情を見せた。やはり工事による騒音被害を気にしているようだ。
─ということは、やはり引っ越すご予定なのですか?
「そうかもしれませんが、まだ先の話ですよね。え? もう引っ越さないといけないんですか?」
─すぐにということではないのですが、実際にはあと8年後くらいから工事が始まるみたいですよ。
「え、そうなんですか!? まだ全然決めていないですね。ご近所さんとかともお話ししないと……」
すぐに今の自宅を引っ越すということはなさそうだが、来るべきときに向けて、準備をしなければいけない状況であることは間違いなさそうだ。
─もし引っ越すとしたら、麻里さんやお孫さんと、2世帯住宅がいいですよね?
「いやいや、そんな話もまだ出てないですね」
─でも、いずれは一緒に住みたいと思いますよね?
「そうですね。でも、よく話し合ってからでないとね」
道路の工事が始まる8年後までに、思い入れのある豪邸に残るのか、はたまた新しい土地で2世帯同居をするのか。関根の決断やいかに!?