こうした苦しみもあれば、喜びもあった。

 2008年9月、和行さんが吉田さんから2年遅れで、司法試験に見事合格を果たしたのだ。

 翌2009年には吉田さんの病も癒え、新しい弁護士事務所で再スタートを切ることに。こののち2人は、新たな展開を迎えることとなる。

『NPO法人EMA日本』のHPによれば、2019年5月現在、同性婚を認めているのは、世界のおよそ20%に当たる26の国と地域。5月17日に台湾が承認。コスタリカも2020年5月までに承認予定だ。ちなみに日本は、これに含まれていない。

 出会いから10年目の2010年の夏、法的には同性同士の結婚が認められない中、結婚式を挙げようと提案したのは、吉田さんだったという。

 2人が生活をともにして久しい。それぞれが所属していた法律事務所ではゲイであることは隠してはいなかった。

「それなのに、昔の友達のほうが知らなかったりするわけなんです。その使い分けが僕はだんだん嫌になってきて、みんなに言いたいと。結婚式を挙げれば、パッとお披露目ができるなあ、と」

 イメージしたのは、クリスマスのころ、レストランを借り切って人前式で行う結婚式。今でこそ同性カップルウエルカムの結婚式場は事欠かない。だが2010年当時は、まだまだ大胆なことだった。

 “レストランは同性同士の結婚式を受け入れてくれるんだろうか?”“電話して聞いてよ”“いや、ランチを食べに行ったついでに……”

 そんな躊躇を重ねているうち、繁忙期12月のレストランは予約で次々に埋まっていってしまう。気を取り直して翌2011年の4月、桜の咲くころの挙式を決めた。

理解してもらうための努力を続けて

2人の結婚式の参列者ひとりひとりに、ヤヱさんは「いつまでも2人と仲よくしてやってください。お願いします」と声をかけた

 選んだのは、大阪の大川沿いにある洒落たイタリアンレストラン。4月にはテラスから見事な桜並木を眺められる。

 だが着々と結婚式の準備を進める2人を横目に、ヤヱさんの心境はいまだ複雑だった。

 前出の友人、松田さんが、そのころのヤヱさんの心を代弁する。

「“やっぱり自分の育て方が誤っていたんだろうか……?”とか、電話で相談されましたね。結婚式で着る服にも悩んでいて。式服って、自分の気持ちが表れるもの。“私は何を着るべきかしら?”って。2人のことを受け入れつつも、まだ戸惑いや不安があったんだと思います」