不満が募るか夫婦のハードルととらえるか
格差婚のデメリットとメリット

 このようなことを含め、格差婚には弊害があるそう。

「『自己実現の独り占め』が起こりやすいということです。自己実現とは『なりたい自分になる』とか『自分の理想を実現する』という意味ですが、例えば、一方の仕事がうまくいっている場合、その人の生活は、うまくいっていない側の生活に比べて、優先される傾向にありますよね。

 家事を分担するなら、仕事の負担が少ないほうが家事を多く受けもつケースが多いでしょう。すると、ますます一方だけが自己実現している時間が増え、一方では自分の理想を実現できず、相手を支える時間が長くなるために、不満をためることになってしまいます」

 離婚する夫婦では、上位にいる側が、このことに気がつかないケースが多いそう。そのため、仮に格差が埋まってからも以前と同じような態度を取ったり、自分を支えることを変わらず求めがちだとか。

「また下位にいる側は、『これまでの自分とは違うんだ』と自立を主張するため、だんだんと双方の気持ちにすれ違いが生じ、関係が破綻するのです。格差が埋まって離婚した夫婦は、新しい関係性を築けなかったことが一因でしょう」

 しかし一方で、格差婚にはこんなメリットがあるといいます。

結婚自体が世間から批判されたり、『どうせすぐ別れるだろう』などと逆境にさらされることで『一緒に幸せになろう』と一体感を持つことにつながったり、下位の立場にいる夫が社会的に成功することが夫婦の共通の目標になり、絆が強くなるということが挙げられます。夫婦にとって、危機や困難は、関係の強化に結びつくのです」

 ただし、浮気や不倫など、異性トラブルが出てくると話は別!

「格下の夫が浮気をした場合、妻は自分が差し置かれたことや、自分の稼いだお金を家庭以外のために使われたことによりひどくプライドが傷つけられ、自分の存在自体が揺るがされます。そこで一気に関係が悪化することは、過去の芸能人夫婦にもみられた経緯です」

 残念ながら廣瀬さんにはすでに二股報道が飛び出しているだけに、いささか将来が心配でもあります。そしてこういった格差のある結婚は芸能人のみならず、私たちにとっても身近なケース。

 結婚を決めたカップルの社会的な立場が“まったく一緒”ということのほうが少ないですよね。その意味でも、これから結婚に臨むのであれば、格差婚を経て幸せになった芸能人カップルを参考に、幸せを模索したいものです。

 と同時に、まさに格差婚に臨むふたりにも、過去のさまざまな悲しい轍(てつ)を踏まないように、心から祈りたいところです。


<今回のセキララアナリスト>

藤井靖先生
明星大心理学部准教授、臨床心理士。昭和54年、秋田県生まれ。早稲田大大学院人間科学研究科博士後期課程修了。同大人間科学学術院助教などを経て現職。専門は臨床心理学、臨床ストレス科学、認知行動療法。心理相談センターで日常生活のさまざまな問題、疾患に対してカウンセリングを行っているほか、スクールカウンセラーや、心療内科、精神科で心理療法(主に認知行動療法)を担当する心理士なども務める。訳共著に『過敏性腸症候群の認知行動療法』(星和書店)。【https://ironna.jp/blogger/498

<文/雛菊あんじ>