絡み合う基地政策と貧困問題

 こうした状況では、ひとり親世帯を含め、低所得者層の子どもたちやその家族の支援が必要となる。そこに注目したのが一般社団法人『ダイモン』だ。

糸数さんらは子育て世代の女性を中心にしたフットサル大会を開催
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 創業者の糸数温子さん(33)は、「非正規雇用や若年労働者が使い捨てられることは全国共通の課題ですが、沖縄県はその層が突出しています。一般的な好景気の影響があっても、不安定な家族形態となりがち。職業や学歴、キャリアは親や家庭の経済状況に起因した家庭の文化に規定されるため“自己責任”にされやすい」と話す。

 沖縄戦で社会基盤が徹底的に破壊され、生き延びた人々はゼロからの出発になった。住民がとらえられ、収容所に入れられている間に基地は作られた。27年にわたるアメリカ統治下では日本国憲法が及ばず、戦後復興や高度経済成長からも切り離された結果、基地依存の経済構造が形成されたのだ。

 沖縄経済の基地依存率は減少傾向にあり、2015年度は5・3%となったが、1957年のピーク時には44%を占めていた。

「基地政策と貧困問題が絡み合った形で、沖縄の教育政策と格差対策は維持されてきました。沖縄は、低学歴と低所得の問題が1度も解決したことがありません。加えて、家父長制が強い地域でもあり、女性と子どもの権利保障は表立って議論されていないように思います」

 そんな中で、子どもたちはどう育っていくのか。

「(虐待を含む)直接的な暴力があったり、ネグレクトだけでなく、将来の選択肢の可能性すらはく奪されたなかで、なんとかやっていると思います。暴力のない世界や安全な場所が得られないとき、助けて”と言える大人を増やすことが必要。それには、ともに時間を重ねることが重要です」

 孤立しがちで困難を抱える家族を、趣味の縁でつなげることで、セーフティーネットにする。そこから社会的なコミュニティーを作る活動をする。その一環で、糸数さんらはフットサル大会や野外のイベントを主催している。

「誰でも参加できるイベントで、支援団体や社会課題との接点作りを仕掛けています。ひとりひとりが詳しい情報を知らないとしても、身近なところで“知っている人”とつながっていればいい」

 貧困が構造的に維持されてきた戦後の沖縄。『ヤンキーと地元』の著者で、NPO法人社会理論・動態研究所の研究員、打越正行さん(39)は調査を続ける中で、沖縄の現実を象徴する米軍基地と、そこに関わる建設業やヤンキーははずせないと指摘。さらに、そこで暴力との関連性を見いだす。

「ヤンキーの後輩たちは特定の先輩と関係を築くことが重視されています。そうすることで、建築現場では過度な無理難題を抑え、殴られることを一部回避できる。ただ、こうした“あうんの呼吸”は汎用性がなく、その先輩のもとでしか働けなくなります」