さらに時代をさかのぼれば、今はジャンル的に少なくなったが、いわゆる『喜劇映画』にお笑い芸人やコメディアンの主演作は数多く存在する。テレビが娯楽の中心になる以前の昭和中期には、クレージーキャッツやドリフターズの映画が何本も公開された。森繁久彌さんや渥美清さんもコメディアンの経験がある。

そういえば宮迫も……

 なぜ芸人は演技仕事でも成功することが多いのか。あるテレビ関係者がこう分析する。

「お笑いの方は、コントや舞台などで、ネタや設定に応じた役柄を演じることが多いですからね。何かになりきることが得意なタイプは、芝居の世界にも入りやすいのではないでしょうか。それから、『吉本新喜劇』や『松竹新喜劇』など、自前の喜劇公演で演じる機会があることも、演技力の向上につながっていると思います」

 しかし、ダメな例も存在する。

「例えばコントのキャラそのまんまだったり、舞台などの演技そのままだったりすると、悪目立ちになってしまい、かえって邪魔になることもあります。例外的に旬の人気芸人を投入する場合は、流行のギャグを一発入れるだけのワンポイント起用という場合もありますが、基本的にはいかにその作品の空気に違和感なくなじめるかが大事。そこを間違えると、すぐネットでたたかれてしまいますから(笑)」 

 ところで、これまで4つの映画賞で最優秀新人賞などを受賞した経験のある、演技派芸人の一角を担ってきた、宮迫博之はどうだろうか。

「宮迫さんの演技力は高かったはずですが、YouTubeを始めるタイミングをはずしてしまったのか再びアンチが騒ぎ出したため、地上波だとまだまだ反発が大きいのでは。役者仕事はもちろん、彼自身の露出が厳しい状態です。でも、映画やネット配信でのドラマあたりで声がかかれば、といったところでしょうか」(同)

 今後も期待される、芸人役者の活躍。「この芸人、こんなに演技うまかったんだ!」または、「この役者さん、元芸人だったのか!」というのが理想の姿だろうか。

<取材・文/渋谷恭太郎>