スムーズに育休を取るための策は?

 育休を取るにあたって、職場での理解や協力は必要不可欠。ただ、上司や同僚に育休に関する知識がないために理解してもらえないこともあるので、まずは正しい知識を自分自身が身につけよう。

「そして上司に妻の妊娠を報告するときには、育休取得を考えていることも伝えておく。そして、妻がつわりなどで体調がよくないときは定時で帰るなど“自分は働き方を変えないといけない”ことを周りに刷り込んでいく。安定期に入ったら、改めて上司と育休の取り方を相談し、引き継ぎなどを決めていく。早い段階から、外堀を埋めていくのがポイントです

Q:育休中、夫は何をすべき?

 育休を取ったところで、夫が家事も育児もまったく手伝わない……。“取るだけ育休”も問題になっている。

 特に第1子の場合は“お風呂に入れるのは夫”など役割をあえて決めずに、夫も妻と一緒にすべての育児、家事をやってみるべきだという。

「新生児育児は、仕事とは大変さの質が違う。昼夜問わず、数時間ごとに同じことを繰り返さないといけない。当たり前のことなんですが“妻も初めてなんだ”“これはひとりではとうてい無理だ”を体感すると、夫の育児への参画意識は激変します」

 ちなみに休日、夫が育児、家事をまったくしない家庭で第2子が生まれた割合は10%。夫が6時間以上する家庭では87%というデータも。

「1人目の育児でトラウマになった母親が、2人目を欲しいと思うわけがない、ということです」

Q:親たちが「自分たちは取らなかった」と主張してくる

 姑(しゅうとめ)世代は、男性が育休を取ることに対し、“ぜいたくな身分ね”と眉をひそめたくなるかもしれない。

「昭和のころは、夫が稼ぎ手の役割を担えていれば、親の役割を果たせたという社会通念があり、仕組みもそうなっていました。女性も社会に出て働くよりも、育児に専念したほうがいい制度だったわけです」

 しかし、時代は変化。今や夫婦両方が稼いだほうが安心できる世の中に。

「娘・息子夫妻に“夫は仕事さえしてればいい”“子育ては女の仕事”と言いたくなるお姑さんの気持ちは、自分が専業主婦として育児・家事に専念したプライド、そして自分自身がやってきたことを否定されたくない気持ちもあると思います。でも、自分の時代の価値観を押しつけているだけかもしれません

 舅(しゅうと)、そして男性上司もまた同様だ。

「妻の妊娠を知った上司が、“大黒柱としてもっと稼がなきゃな!”と、親切心から仕事量を増やすケースも。でも、育休を取りたいと思っている男性からしてみれば、迷惑でしかない。部下から妻の妊娠報告をされた上司は、“育休はいつ取るの?”と聞いてあげることが大切です。現代社会では、そんな“イクボス”が求められています」

 子育て夫婦の親世代は、情報を令和にアップデートする必要がありそう。

(取材・文/鷺島鈴香)


【識者PROFILE】
塚越学さん ◎NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。公認会計士として監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)をへて、東レ経営研究所勤務。3児の父親で、それぞれの誕生の際に育休を取得。『さんきゅーパパプロジェクト』ほか多数の男性育休促進事業で活躍中