パンデミックが1年で終息するとは限らない

 日本以上に感染者や死者が急増している欧米でも、企業活動や人の移動の制限が加速している。世界同時不況の拡大を止められるのも、やはり感染拡大の終息だけだろう。

「暖かくなればインフルエンザのように下火になると期待する声がありますが、一方で“新型コロナウイルスが暑さに弱いとは限らない”と警鐘を鳴らす感染症の専門家もいます。しかも、オーストラリアや南米など南半球はこれから秋、そして冬を迎える。人の往来を制限し続けない限り、北半球で秋以降に再び感染が拡大するおそれがあります。

 100年前のスペインかぜでは全人類の3人に1人、当時の人口で5億人が感染したといわれますが、パンデミックは1年ではおさまらず次の冬も大流行しました。新型コロナのワクチンが1年以内に開発されても世界中の人に行き渡るのには時間が必要です。来年の今ごろ、まだ世界中が大騒ぎしている可能性がある。そうなれば、東京五輪を1年延期しても無事、開催できるとは限らないんです」(コロナ騒動を取材する全国紙記者)

 仮に、東京五輪が“中止”という最悪の事態を迎えた場合、日本のGDPが7・8兆円減るという試算がある。そうなれば“リーマンショック超え”の大不況になるのは確実だ。中小企業にとどまらず大企業でもリストラや派遣切りが増え、失業者があふれかえるかもしれない。

 私たち庶民にできることを、荻原さんに聞いた。

「政府は、少しでも消費を増やし景気の底上げを図るために緊急経済対策を練っています。でも私たちが今とるべき道は、借金をしないこと。住宅ローンなど借金がある人は少しでも減らしてください。そして節約をすること。現金をキープしてしっかりと家計を守りましょう。政府の言うままに、給付金(出たらの話ですが)を無駄に使ってはだめです。節約したら景気がもっと悪くなるじゃないかと言う人がいますが、もともと収入が少ない庶民にできることは、支出を抑えてひたすら耐えることしかないんです

 アベノミクスで株価が上がっても、儲(もう)けたのは資金のある富裕層。リストラを繰り返した大企業が過去最高益を上げて内部留保をため込む一方で、社員の給料は上がらず非正規雇用は非正規雇用のまま。金を使えと言うのなら、一時金ではなく、給料を上げたり、非正規雇用を社員化するほうが効果的だろう。

 最後に、荻原さんからこんな注意も。

現金はタンス預金ではなく、銀行という金庫に預けておきましょう。“新型コロナ詐欺”が増えているそうですよ。“コロナで金が高騰しているので、今が買い時です”といった話には乗らないように気をつけてくださいね」

【取材・文/つきぐみ(水口陽子)】


経済ジャーナリスト・荻原博子さん ◎難しい経済の仕組みをわかりやすく解説することに定評があり、家計経済のパイオニアとして活躍。著書に『最強の相続』(文春新書)など多数。