新型コロナウイルス禍の日本で、過去のライブ映像を無料で開放したり、メッセージを発信したりするアーティストが芸能ニュースをにぎわせている。

 歌手の星野源(39)は『うちで踊ろう』をYouTubeに投稿。その際「誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないか?」と呼びかけたものを、安倍晋三首相が誤読しフリーライド。世間の顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまった。

 俳優の東出昌大(32)の妻・女優の杏(34)は、シンガー・ソングライター加川良さんが半世紀ほど前にリリースした楽曲『教訓1』の弾き語り動画を、YouTubeの所属事務所公式チャンネルにアップし、共感を広げている。

無防備な総理 失格♪

 そんな中、ひとつの動画が改めて注目を集め、拡散されているという。

「10年近く前の動画なんですけど、数周回って現在の政治状況を見事に皮肉っている音楽があるんです」

 スポーツ紙音楽記者がそう伝え「YouTubeで『アベーロード』を検索すれば出てきますよ」とアテンドする。

 ザ・ビートルズの名盤『アビーロード』を、『アベーロード』ともじったもので、歌っているのは桑田佳祐(64)だ。

「2009年の音楽番組でオンエアされたものですから、第一次安倍政権は終わっている。『アビーロード』だから語呂合わせで『アベーロード』になっただけで、安倍さん個人を攻撃するものでもないんです。

 ところがその内容がめちゃくちゃ面白い。日本の政治状況全体をからかっているような作りなんです。共産党の志位和夫委員長も、小沢一郎も剛腕としてやり玉に挙がっているし、民主党のダメっぷりもきちんと皮肉っていますからね」

 アルバム『アビーロード』に収録されている『Come Together』(カム・トゥゲザー)は『公明党BROTHER』になり〈♪いいか、もう!? ウザったい政権 無防備な総理 失格♪〉とうたわれている。

『Something』(サムシング)の邦題を『さみしい…』にし、〈♪さみしい…… 銀座で志位KNOWS♪〉とバッサリ。『Maxwell's Silver Hammer』(マックスウエルズ・シルバー・ハンマー)の歌詞〈♪Can I take you out to the pictures♪〉には〈家内低給アウトだ! 社保庁〉と言葉をかぶせている。

「『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)のソラミミ、あれと同じノリです。英語の音に近い日本語をはめ込んでいるんですが、これが絶妙な意味を持っていて、聞いているとハマってしまう。最高に面白い言葉遊びを音楽に乗せているという感じですね」(前出・スポーツ紙記者)

 新型コロナウイルス対策のスピード感の欠如、布製マスク2枚、昭恵夫人の自由奔放な遠出、星野源とのコラボミスなど、世間とずれまくっている『アベーロード』だけに、10年前の動画もなぜか暗示的に映ってしまう。 

〈取材・文/薮入うらら〉