1月1日の値上げ前が見直しのチャンス

「火災保険って保険会社にとって儲からない商品なんです。特に、ここ数年は自然災害が相次いで保険金の支払いがかさんでいて大変です」

 日本損害保険協会の調べによると、2018年9月の大阪、京都、兵庫などで大きな被害を出した台風21号では、自然災害としては過去最高の1兆678億円もの保険金が支払われた。翌2019年も台風15号と同19号の支払保険金が、関東など東日本を中心に合わせて1兆円を超えた。

 そのため、損保大手4社(東京海上日動、損保ジャパン、三井住友海上、あいおいニッセイ同和)は、’15年と’19年に数%ずつの値上げを行ってきた。さらに、2021年1月1日にも全国平均で6~8%の値上げを行う(日経新聞7月7日の記事より)。

「保険料がどのくらい変わるかは、住んでいる地域や築年数などによって異なりますが、多くの人にとって値上げとなります。また、お得な特約もどんどんなくなっています。“事故時諸費用”といって、保険金を受け取るときにお見舞金が一定割合で上乗せしてもらえる特約があるのですが、最近はこれも縮小される傾向にあります。例えば三井住友海上には30%(上限300万円)上乗せするというほかにはない太っ腹なコースがありますが、これも1月1日以降はなくなり、他社同様10%(上限100万円)のコースだけに……」

 前述のように保険金の支払いが増えた大阪、京都、兵庫、東日本のほかにも、熊本や愛知など近年、災害が多かった地域の築年数が古い家屋では今回の改正で、10%~30%値上げになると覚悟すべき。

 さらに、保険料がお得な長期契約も、かつては最長で36年の契約ができていたのが、今では最長10年。今後は最長5年に短縮することも検討されているそう。値上げや特約のレベルダウンが行われる前に火災保険を見直さないと!

「保険料が値上がりになる人は、12月中に10年契約の火災保険に入り直しておけば、値上げ前の保険料やお得な特約が10年継続できます。火災保険は先述した通り、持ち家や、賃貸の場合でも必ず加入するもので、今回の値上は多くの人に関係してきます。ぜひ、1度見直してみるといいですね」

 ただ、今の火災保険を解約した場合、すでに払い込んだ保険料がどうなるかが心配。生命保険などでは、途中解約すると少ししかお金が戻ってこないことがあるけど……。

「5年契約の保険でまだ2年しかたってない場合、使わなかった3年分の保険料はほぼそのまま返ってきます。なので、解約して入り直してもデメリットはないと考えていいでしょう」

 ただし、2015年以前に35年などの長期で契約した場合は、保険料が格段に安いお宝保険となっている。建物・家財を対象にしっかり補償内容が確保できているのなら見直しは不要。補償内容に不安があるなら代理店に相談を。

 まずはネットの見積もりサイトや保険の代理店などで他社との比較をし、さらに12月加入と1月加入の場合の見積もりを取ってみて、どのくらい差が出るかを、確認してみよう。

 また、いま加入している火災保険を解約したらどのくらいお金が戻るかも確認しておくのも忘れずに。これを機に、他社との比較はもちろん、他のプランなど、今まで足りなかった補償を付け加えることも検討したい。

(取材・文/鷺島鈴香)

《PROFILE》
吉田友哉さん ◎株式会社Japan Asset Management理事長(www.japan-asset-management.com)、プライベートバンカー。大手証券会社にて、1000人を超える富裕層に資産管理アドバイスを行う。2019年に退職後は、幅広い層を対象に金融教育を展開している。