圧倒的に多い“食べ物系”

「芸人さんの場合、確かにスタイリッシュよりも親近感のほうが有利な気がします」

 と、松本の「説」にうなづくのはある放送作家。

「もちろん実力があればコンビ名に関わらず人気者になるわけですが、芸人さんの“存在自体”をおもしろがられることで、さらなる人気を得ていく場合があります。そこに親近感のあるコンビ名があれば、さらにプラスに働くのではないでしょうか。あまりカッコよすぎる名前だと、ギャップが生じてしまいますからね」

 スタイリッシュなネーミングにすると、芸人にとって大切な“親しみやすさ”の面で損をする場合もあるという。 

「俺たちカッコいいだろ、センスありますよ、という雰囲気を見る側が感じてしまうと、イヤミに取られ見る側と距離が生まれてしまいます。また、何か不祥事を起こした場合は、より印象が悪くなる可能性もあります」(同前)

 親近感という意味では、やはり“食べ物系”が圧倒的に多く、『クリームシチュー』に『バナナ』、『マヨネーズ』、『サンドイッチ』、『和牛』、『とろサーモン』、『チョコレート』、『銀シャリ』などのネーミングの人気者は多い。

「これがフランス料理やイタリアンなどの、小洒落た名前じゃないところがいいんです。そうだとしたら覚えにくし、馴染みもないですからね。身近な食べ物だからこそ、その親しみやすさは薄れることがありません」

 また、あえてダサい名前にしたことで、一気に売れた例もある。

「『さまぁ〜ず(旧・バカルディ)』さんや『くりぃむしちゅー(旧・海砂利水魚)』さんは、もともと番組の罰ゲームで改名させられ、ひらがな表記も含めてあえてダサいものになりました。『野性爆弾』のくっきー!は、もともと本名の川島邦裕でしたが『くっきー!』に改名したことで、あのイカツイ見た目やシュールな芸風のとギャップが効果的になったのではないでしょうか。ただ名前がダサいだけではダメで、そのダサさが生きる実力がないと意味はありません」(同前)

 松本言うところの「カッコいいコンビ名」から改名を考える際、または新たに結成する場合には、“親近感を覚え、いい感じのダサさ”を出せるものがいいのかもしれない。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉