キャンプや川遊びで感染のリスクが

これからシーズン本番のキャンプだが、自然の中でも水道水での手洗いが大事!
これからシーズン本番のキャンプだが、自然の中でも水道水での手洗いが大事!
【写真】グラフで見る、動物から人に感染するウイルスの増加

 薬剤耐性菌をはじめ、動物由来感染症は動物と接することで感染する。そのリスクを少しでも減らすには?

「例えば動物園や牧場などで、子どもが動物とふれあうことは、教育上にもとても良いと思いますが、触ったら必ず手を洗いましょう」

 家で飼っているペットにも注意が必要だ。

「ミドリガメは、食中毒になるサルモネラ菌を持っている可能性がある。ミドリガメを触った手で口に触ると感染の危険があります」

 そして野生動物は、むやみに触らないこと、そして食べないことだ。

「北海道にいるキタキツネは、エキノコックスという寄生虫を持っています。キタキツネは人なつこく可愛いので触りたくなりますが、ガマンしておきましょう」

 ジビエ料理などで野生動物を食べるときも、生焼けや素人の料理には手を出さないほうがよさそうだ。

「川魚などを釣って食べるときも十分に火を通してから食べるように。川の水はきれいに見えても、上流に牧場や養鶏場、養豚場があると糞便が川に流れ出ている可能性が。寄生虫や薬剤耐性菌が含まれている危険があります

 川の水を飲むのは厳禁!

「キャンプが流行っていますが屋外で密は避けられても、動物由来感染症のリスクは避けられません。食事の前は必ず水道水で手洗いを」

 また、海も大腸菌の多い海岸があるので、やはり食前の手洗いが重要だ。

「動物由来感染症を防ぐため“ワンヘルス”という考え方がある。“人が健康でいるためには、動物も健康でなければならない”という考え方です。家畜動物と野生動物の接触を避ける、成長目的で抗生物質を与えない、などの取り組みがなされています。

 また抗生物質が入っていない食肉を買うことで流通量を増やし、将来的に家畜への抗生物質の投与を減らします」

 自分だけでなく、子どもや孫の世代の環境を守るため、活動することが大切だ。

「孫の世代が薬剤耐性菌に汚染された世界にならないよう、そして抗生物質が効かない世界にならないよう正しい知識を知ること、手洗いなど感染予防対策を徹底することが重要です」

【動物由来感染症を防ぐ5つの対策】
(1)動物を触ったら、水道水で手を洗う
(2)野生動物は触らない
(3)川や海へ遊びにいったら、水道水で手を洗ってから食事をする
(4)川魚を生、または生焼けで食べない
(5)野生動物(ジビエ料理)は、十分に火を通したものを食べる

【薬剤耐性菌パンデミックを防ぐには?】
(1)抗生物質フリーの食肉を買う
(2)風邪には抗生物質は効かない。処方されたら医師に相談。こちらから要求しない
(3)手洗い、うがい、マスクなど日ごろから感染症対策を心がける

教えてくれた人は……具芳明先生
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 統合臨床感染症学分野 教授、総合内科専門医、感染症専門医。国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター 情報・教育支援室長などを経て今年4月から現職。薬剤耐性(AMR)対策を推進するための教育啓発活動や医療現場の支援に従事。

(取材・文/山崎ますみ)