最も広範囲かつ、甚大な被害をもたらすのは噴煙による降灰だ。噴煙は火口から1万メートル上空まで噴き上げられ、それが西風に乗って東のほうに飛んでいく。

火山灰で甚大な被害、首都圏は大パニック

 宝永クラスの大噴火が起きれば首都機能は完全にまひする。道路網、鉄道は火山灰が降ったところは使えなくなる。そうなると物流はストップ。職場や学校から徒歩での帰宅を余儀なくされたり、水や食べ物が手に入らない買い物難民が発生する。降灰後の雨で送電線がショートすれば停電になり、何日も真っ暗な状態で夜を明かすことになる。当然、暮らしも経済も国内は大混乱となる。

東日本大震災で帰宅困難者が街中に溢れた光景がよみがえるおそれも
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「ヘリコプターなどの航空機も飛べません。これまでとは違った災害となることを頭に入れておかないといけない」

 地震や水害などと同様、食料や水などを日ごろから家族の人数分、備えておくことが大切なのだ。

噴火の場合はあと、マスクとゴーグルも用意しましょう。火山灰は細かいガラスの粒。気管支に入ると健康被害につながるおそれがあり、目に入ると眼球が傷つきます」

 水中眼鏡やスキーのゴーグル、花粉症のゴーグルなどでも代用可能だ。

 多くの日本人は身近に火山がないため、噴火のイメージができないことも課題だ。

「火山が噴火したときはどうなるのかを日ごろから意識することも大切です」

 日本人が好きな温泉も火山と密接な関係がある。

「温泉地は火山にも近い。火山地域に行くということはリスクもあることを知ってほしい。旅行中に噴火があったり、火山ガスが発生する危険もあります。万が一のときも慌てないように心構えをしておくことが大事だと思います」

 2014年には長野県と岐阜県の境にある御嶽山が噴火、登山客が犠牲になった。

 地震や津波同様に山にも危険は潜んでいる。

864年の噴火で溶岩が流れ出て、その上に広がるのが現在の青木ヶ原の樹海だ
864年の噴火で溶岩が流れ出て、その上に広がるのが現在の青木ヶ原の樹海だ

 だが、恐れてばかりはいられない。前出の関室長は、

「一度の噴火で富士山山麓の全体がつぶれてしまうわけではありませんし、溶岩流で命を落とす可能性も低い。パニックにさえならなければ山中で噴石を受ける場合などを除き、噴火現象により直接、人命の損失は免れると思います」

 そのためにも日ごろからの備えや学びは欠かせない。

「富士山の噴火を学ぶことで適切な対策を取ることができます。津波には防潮堤、地震だと耐震補強などで対策できますが、火山の場合は逃げることしかできません。いざというときに逃げられるようにその知識を身につけてほしい」(前出の吉本さん)

 大きな被害が想定されている富士山噴火。だが、正しく知ることで命を守ることができる。『Xデー』の足音が聞こえる前に一日も早く対策を取りたいものだ。

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