決めゼリフは偶然誕生

「大阪の番組では“超能力マジック”と紹介されていたので、視聴者的にはどっちつかずに見えたんでしょうね。『11PM』のスタッフに“黙っていたら超能力ですね”と言われたことから、“超不思議現象”と言ってマジックを披露したところ大ウケ。その後、木曜スペシャルで“超魔術”と名付けられ、見せ方や紹介する言葉の大切さを実感しました」

'08年にはコミック化されるなど、出版界でも大ブームを巻き起こした
'08年にはコミック化されるなど、出版界でも大ブームを巻き起こした
【写真】Mr.マリック、YouTubeチャンネル『マリックがきた!!』を開設しマジックを公開している

 馬券を的中させたり、パチスロ台で7の絵柄をそろえてフィーバーさせるといったテレビ的なマジックショーを次々に披露したところ話題を呼び、大ブームに。

「お店と協力して、あとは絵柄をそろえるだけの状態にしたところで“ハンドパワーです”と言ってそろえていました。だからパチスロファンにはすぐに見破れたようで、“あんなのインチキだ!”といったクレームの電話もかかってきたみたいです。とはいえ、インパクトも大きかったようでどんどん盛り上がっていきました。当時はグレーゾーンが許された時代でしたが、今なら絶対に無理でしょうね……(苦笑)」

『ハンドパワー』や『キテます!』といった決めゼリフも、偶然から生まれたものだったと振り返る。

「マジックショーでお客さんをステージにあげたところ、“この不思議な力はハンドパワーですか?”と言われ、便利な言葉だなと使わせてもらいました。それで“ハンドパワーです”と言いながらマジックを披露した際、別のお客さんが“ハンドパワーがキテます!”と言ったので、それも使わせてもらうことに(笑)。結局、自分が頭で考えたものより自然なリアクションなどから発せられた言葉のほうが、キャッチ―なものが生まれるんですよね」

 売れっ子になって3年ほどたったとき、ストレスから顔面麻痺になってしまう。

「次々に新ネタを作らないといけないストレスが身体に出てしまったみたいです。最初は顔の右側の神経が切れたのですが、治り始めたと思った矢先に今度は左側の神経が切れて……。病院に行っても“いつ完治するかはわからない”と言われてしまいましたが、番組の収録は休めない。だから本当に症状が酷いときはスタッフに話せる状態ではないということを明かして、ほぼ無言で収録を乗り切ったこともありましたね。

 神経麻痺でまばたきができないから、セロテープでまぶたを閉じさせたりしていたのですが、もともと大きなサングラスをしていたこともあり、なんとかマスコミにもバレずにすみました。当時はマジックのネタだけでなく、病気のことも隠している状態でしたね」

 決まっていた収録をこなしたあとは仕事をセーブ。顔面麻痺がバレづらい、薄暗い会員制のバーでショーを再開させると、そこで新たな出会いを果たす。