「昔は“落ち目タレントの墓場”なんて揶揄された通販番組ですが、今ではそのギャラのよさからタレントたちがこぞって出演したがっているんです」

 と、キャスティングプロデューサーが明かす。

 長引くコロナ禍で消費者の需要が増えている通販業界。一方でその分厳しくなっているのが表現規制。

表現規制で保阪尚希は呼び出し、アンミカは出演NG

「公正取引委員会(以下、公取委)が景品表示法違反を未然に防ぐために厳しく監視しています。

 少しでも規制に反した表現をすると、タレントや制作スタッフが公取委に呼び出しを受けることも。1日3億円を売り上げる“通販の帝王”保阪尚希さんは初回の出演時に誘導ととられる表現をして呼び出され、翌日“もうしません”という誓約書を書かされました。モデルのアンミカさんも“レッドカードをもらって半年間番組に出られなかった”とテレビ番組で告白しています

 いくら商品を売り上げるタレントでも公取委にNGの烙印を押されると出演できなくなる世界なのだ。

「通販番組に出るタレントさんは定期的に講習を受ける必要があります。それはどんな売れっ子タレントさんでも同様です。表現規制は日々厳しくなっていますからそれはアンミカさんや保阪さんも同じです。絶対に禁じられているのは、誘導。買うように仕向けるのではなく、買いたい気持ちにさせる、これは似ているようで全然違うんですよ」

 と話すのは、通販番組専門タレントを育成・輩出するスクール講師の佐々木美希さん。

最新通販業界NGワードとは?

置き換え1

×「絶対」「必ず」などの強い言葉
○「希望」「反響がある」

「これは最も言ってはいけないんです。すべてのお客様に絶対や必ずはありえませんから、このワードを言うと公取委とは別にBPO(放送倫理委員会)でも問題視されてしまいます」(佐々木さん、以下同)

 ではどう置き換えているの?

「絶対と言いたいときは“きっと”や“反響があった”などの前向きな言葉に言い換えています。例えば“絶対にやせる”と言いたいところは“即効スリムを目指す”などの表現に変えています」

置き換え2

×「ほうれい線」「しわ」
○「年齢サイン」

 アンチエイジング商品は毎日のように出ているが、実は「ほうれい線」「しわ」などの言葉は使っていないという。

「アンミカさんもテレビ番組で言っていましたが、ほうれい線という言葉を不快に感じる人が一定数いるんです。ですから“年齢サイン”などタレントさんがそれぞれ置き換えて使っています。アンミカさんは年齢サインと言っていましたが、“笑いじわ”と表現する人も。ただ“しわ”というのはNGワードなので、あまり使いたくないのですが笑いをつけることでポジティブなものへと変換しているんです」

 なぜNGワードができるのか?

「クレームとの歴史ですよね(笑)。ひとつひとつお客様の声を対応しているわけではないのですが、改善されるということはそれだけお客様の声が多かったと解釈しています」

置き換え3

×「腰痛」
○「腰の違和感」

 これは意外。いったいなぜ?

「例えば“腰痛に効く”商品を紹介すると健康保険の適用が必要になるんです。ですから腰痛という言葉は使えない。そこで“腰の違和感”や“腰が重い”など直接的ではない表現になります

 保険の適用がきかないマッサージ店や整骨院でも腰痛などの表現をしていると指導が入るという。

置き換え4

×「やせている」「細い」
○「スリム」「バランスのとれたボディ」

 ダイエット商品が多いイメージの通販番組だが、「やせ」は使えないという。

「'10年代くらいからやせていることがよいと思われてはいけない、と表現規制が行われました。そのため、誰にでも通じるように“バランスのとれたボディ”や“スリム”という表現が好ましいとされています。

“やせたい”という表現はNGではありません。やせ表現に関しては使ってしまってもイエローカードが出されるわけではないのですが、やせという表現をするとクレームの電話は多くなるので、職員の対応が大変になると聞きます」

置き換え5

×「よく眠れる」
○「深い睡眠が得られる」

 現代人は寝不足に悩む人が多い。そこで登場するのが睡眠グッズなのだが、ここでも規制は多い。

「眠れるという表現をすると必ずくるのが“眠れなかった!”などのクレーム。また誘導表現として表現規制にもひっかかります。そこで置き換えているのが“深い睡眠”というワード。誰にでも当てはめることができますし、深いか浅いかの判断は本人に委ねることができます」

 判断を購買者自身に委ねるというのが手だという。

 と、大きく分けて5つのワードを紹介してもらったが、

「まだまだたくさんあります。さらに規制は日ごとに厳しくなっているので、半年後には今日ご紹介した置き換えワードも使えなくなっているかもしれませんね」

 SNSなどでの言葉狩りが著しい昨今だが、通販業界に比べればまだまだ生きやすい? 通販番組は“誰も傷つけない世界”を日々更新している。