「今のネット広告は信用に値しないものが非常に多く、その規模も拡大しています。ネット通販を主な販売手段としている事業者は、違法な商売をしても簡単に逃げることができます。行政から厳しい指摘を受けても、販売をやめて、会社を潰してしまえばそれですべてが終わり。

 新たな会社を作るにしても、必要な費用は数十万円程度。費用がかからない理由は、商品は品質の低いものでいいから。違法な表現をして効果をうたう文言こそ大事という考え。そのため新しく会社や商品を立ち上げてもお金がかからない。だから、気軽に違法な広告を打てるのです」

 そう話すのは、違法ネット広告調査システムを提供する『株式会社デトリタス』代表取締役の土橋一夫氏。

「一番いい」と体験談を使うのはNG

 違法広告は、芸能人が起用されることも少なくない。一例を出して、具体的な“違法性”について解説する。高島礼子が起用された染毛料の広告だ(以下、広告へのアクセスはすべて5月16日14時時点。その後、広告内容は修正されている)。土橋氏の解説と、東京都薬務課監視指導担当が発行している『令和3年度医薬品等広告講習会』(以下、東京都資料)の文面もあわせて紹介する。まず前提として……。

「同一ページ内で、『染毛料』、『染毛剤』の表現が混在し、どちらか判然としません。染毛料は“化粧品”、染毛剤は“医薬部外品”に該当します。そのため、同一の商品に対してこの2つの表現を同時に使うと、どちらかは事実に反していることになります。今回の場合は、おそらくは化粧品の染毛料が正しい。そのため、医薬部外品でないと名乗れない商品を、“染毛剤”との表現をしていることが違法表現となります」(土橋氏、以下同)※本記事配信以降、『染毛料』、『染毛剤』という表現は削除された。

 細かく広告を見てみよう。ちなみに違法表現の広告はあまりに数が多く、またチラシのように“実物”がなく、同じURLのまま書き換えられることもあり証拠が不十分になるなど、処分まで至るケースが少ない。

「広告では、高島礼子さんが“私が今まで使った中でこれが一番良いです”というセリフを言っている形の表現があります。体験談を使った効能保証表現は禁止です。今回、高島さんの体験談として“一番良い”と言っている。これは“効果に関する使用体験談”と捉えられるのでアウト」

 東京都資料はこの点について、“効果や安全性についての使用体験談は、認められない”としている。

「2つ目の問題として、化粧品では最大級表現の禁止というルールがあります。“美しく見せる効果に関して、この商品が1位だ”と表現するとこれに違反します。高島さんのセリフで“一番良い”と言っていますが、最大級表現にあたり違法表現です※本記事配信以降、高島のセリフは削除された。

 東京都資料には、“効能効果等又は安全性についての最大級の表現又はこれに類する表現の禁止”とある。違法として挙げられている例は、“最高のききめ、無類のききめ”“胃腸薬のエース”“売上げナンバー1”(新指定医薬部外品以外の医薬部外品及び化粧品を除く)。