結婚の理由は一緒にいて、摂食障害が良くなったから

 症状が悪化する原因は、ストレスや不安、孤独感。長くこの病気と闘い、彼女なりの傾向もわかってきたという。

「異性関係が充実していると不思議とおさまったりすることがあって。依存と言ったら言いすぎですけど、何か夢中になれる対象がないとダメ。寂しいという気持ちを埋めようとするのかもしれません」

 これまで3度結婚と離婚を繰り返してきた。やはりそれも安心感が欲しかったから。

「結婚したのは全部、摂食障害が一時的に良くなったのが理由でした。おいしいねって一緒にご飯が食べられて、感動して結婚したんです。それをメディアで言ってもわかってもらえないだろうから、あえて言わなかっただけで……」

 好きな人と食事をしながら笑い合う。カップルなら当たり前にあるそんな瞬間も、できるとは思っていなかった彼女にとって「ものすごくびっくりする出来事だった」という。けれどその幸せも長くは続かなかった。

 1度目の結婚生活は72日間、2度目の結婚生活は55日間で、3度目の結婚は14日後に離婚し、スピード離婚と騒がれた。

「最初は幸せでも、少しでも相手のあらが見えたり、結婚生活の中で何か不安に感じることがあったりすると、すごいストレスになってしまって。もうここから逃げられないんだと思って、症状が以前より悪化してしまったりするんです。結婚前はこれで病気が良くなるものだと思い込んでいて、そこまで想定していませんでした。甘かったですね」

お尻の骨が浮き出てお腹はぽっこり

 気持ちはひとまず安定しても、摂食障害がもたらす身体へのダメージは大きい。

「体力はかなり落ちています。寝るのも体力って必要なので、不眠症にもなって、30分に1回は目が覚めてしまう日が続いていて。筋肉はほとんどないので、お尻の骨が浮き出ていて、お腹は逆にぽっこり膨らんでいる感じ。栄養がとれていないので、立ちくらみもするし、抜け毛もひどい。お風呂場はもうホラー映画みたいになっちゃってます

 15歳から30年近く摂食障害と闘ってきた。これから先、どう病気と向き合っていくのだろう。

この病気と共存していくしかないんでしょうね。普通の人みたいに食べるというのはちょっと厳しいんじゃないかと思います。例えば海外に行ったりとか、環境を大きく変えたりすると良くなることもあるんでしょうけど。でもいつ爆発するかわからない爆弾を抱えている状態なので」

 自身の摂食障害を公表し、闘う姿を発信する。そこには同じ病気を患う人たちに対するひとつの思いがあるという。

孤独じゃないよっていうことを伝えたい。摂食障害でもちゃんと仕事もできるし、笑顔でいられる。私も強く生きていくから、その姿を見ていてほしいなって思います。

 陰で吐いたり拒食になったりしてる人間がここにもいるんだよと、でも笑顔で頑張っているんだと思ってほしい。周りに理解されないし、死にたくなるくらい苦しい。でもひとりじゃないからねと、わかってる人間がいるんだよって、伝えられたらと思っています」

 遠野なぎこさんのご冥福をお祈りします。