「氷河期世代なので非正規雇用のままこの年齢。子どももいないからひとりで食べていくには十分だし、わずかだけど貯金もできている。ただ、年金に頼れないから働けるうちに少しでも多く働かないと」
と、現在3つの職場を掛け持ちしているというが、その瞳は明るかった。
年をとって大切なのは同性の友人
【ケース2】「友人2人を死守しています」武田ケイさん(仮名・61)
「ひとりで死ぬことと孤独死ってイコールじゃないと思う」
と話すのは、神奈川県在住の武田ケイさん。
公務員を昨年、退職。今は関連先企業でパートタイマーで働いているという。
「昨年、子宮筋腫が見つかって入院したんです。そのときに困ったのが入院保証人。親きょうだいはもう他界していないし、結局友人が保証人になってくれたんです。この先いろんな場面で保証人が必要になる。そのときに友人2人は死守しなければと(笑)。もちろん自分も友人の役に立ちたいし」
以来、友人とは積極的に連絡をとるようにしたという。
「友人が追っかけているアーティストのライブなどに付き合ううちに私も推し活の楽しさに目覚めたし、疎遠になっていた子育てしている友人とも、彼女たちの子どもが巣立ったことで付き合いが再開しました。60歳を過ぎてからまた友人との青春が始まった感じ。やっぱり年をとって大切なのは同性の友人だなと思いますね」
武田さんは60歳を超えてからの青春を楽しんでいる。
【ケース3】「60歳を過ぎてから近所付き合い始めました」吉野智美さん(仮名・66)
「マンションの管理組合のテニスサークルに入ってから人生変わりましたね」
と話すのは、千葉県に住む吉野智美さん。コロナ禍の’20年に近所付き合いを始めたと話す。
「フリーランスで仕事をしているので、自宅でできるリモート作業は苦じゃなかったんです。ただ、誰とも会えないのが寂しくてマンション内の会合に始めて顔を出したんです」
すると世界は一変したという。
「これまで顔を合わせても会釈する程度だったご近所の方のパーソナルな一面が見えて“意外と面白い人なんだな”とか、知らなかった一面が見えて」
吉野さんが住むマンションは1LDKの間取りからか、おひとりさまが多いという。
「同じような境遇の人が多くて親近感が湧きましたね。私は元夫の不倫で離婚して慰謝料としてマンションをもらったんです。私のようなバツイチからもともと独身の方まで幅広く、男女問わずみんなここを終のすみかにしようとしているから助け合いが必要だねって」