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ー カラオケを避けている理由
浜木綿子

 すっかり秋も深まって、お出かけ日和になってきましたね。木々の色づきが楽しみな、浜木綿子でございます。

 先日、朝から妹と大好きなお買い物に出かけましたの。ところが大変なことに……、食品を買い終えて外に出たら、なんと、ザアザアの大雨。タクシー会社に電話しても、どこも車がありません。

カラオケを避けている理由

 友人にも電話しましたが、その日に限って留守。しばらく待ちましたが、雨は強まる一方。すると傘を買ってきた妹が、「お姉さん! バス停まで歩こう!!」と言うので、私は吸い寄せられるように、前が真っ白で見えない中を歩きだしました。

 右手に傘、左手には小さなギプス。これで転んだら、もうオシマイ!と、必死で妹の後ろをついていって。川のような雨水が流れる場所でためらっていたら、妹が「お姉さん、危ない!!」と手を差し出しましたが、全然届きません。

 夢中で歩いて、やっとの思いで、バス停に。ありがたいことに、バスはすぐに来ましたが、満員です。シルバーシートには大きな男性がデン!「老人に席を譲ってェ!」と、視線を送るのですが、目をそらしてスマホに夢中。

 仕方なくドアの手すりにしがみついて、揺れる車内で怖い怖いと叫びながら最後まで頑張りました。自宅に着いたら、全身“ヌレネズミ”。老人2人でレベル4の豪雨の中を歩いて「これは奇跡ね」と、やっと妹と笑い合えました。

 酷い目に遭いましたが……、歩く自信をいただきました。さて、そんな私の「苦手なもの」って何だと思われますか。あえて言えば「茶碗蒸し」。あんなにおいしい卵を、わざわざグチャグチャにしていただくのは、卵に申し訳なくて(笑)。

 それから「自慢話」も苦手。ご自分が一番偉いと思ってそうな人、自虐風に自慢する人もいますけど、ちょっとイヤ。私はホメていただいたことも、自分からはあまり言えないです。これは性格かしら。あるいは環境かもしれませんね。

 それから、できれば避けているのが「カラオケ」。唄うことは今も好きで、鼻歌ぐらいは口ずさみますが、カラオケは自由なテンポで唄えないでしょ。それに声帯って筋肉ですから、どんどん硬くなる。使わない私の声帯は「長い冬眠に入ったみたい」。

 でも、この前、急に、本当に急にね、友人に「カラオケ行ってみたいなぁ……」って、つぶやいたら、彼女はすぐに近くのカラオケ店で会員にまでなって、「サァ! カラオケ行きましょう!!」って。

「イヤァァ……チョ、チョット待ってェ、あのときはそう思ったけど今はもう……」と、ひたすら謝りました。「浜さんって面白い人!」って、大笑いして許してくれましたが。本当はタカラヅカ出身なのに、下手に唄うと「それでタカラヅカ?」って思われるのがイヤなんでしょうね(笑)。

 近ごろ「夢ってありますか?」と聞かれますが、おかげさまで、それなりの夢は叶えさせていただきました。でも、しいて言うなら、フリルやレースが付いた、フワァーっとしたドレスを着て、タカラヅカのような濃いまつげをバッチリ付けて、髪にはお花。

 その姿を実物より美しく撮っていただいて、その写真をみなさんに差し上げたい。幼稚だけど「夢の話」ですョ。人生はいつまでも夢を持っていたほうが楽しいわね。それに夢は自然と叶うものではなくて、自ら叶えるものじゃないからしら。

 みなさん! たくさんの夢を持っていらしてね。そして、心の目を養いましょう。いっぱい笑ってお過ごしくださいね。では、また!

はま・ゆうこ/1935年、東京都生まれ。宝塚音楽学校卒業。'62年に文化庁芸術祭奨励賞、'73年にゴールデン・アロー賞、'89年に菊田一夫演劇大賞、'95年に橋田賞などを受賞。2000年に紫綬褒章、'14年に旭日小綬章を受章