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ー 増加する「喫煙」描写の背景

 最近、エンタメの話題作で「喫煙」の描写が目立つ。

増加する「喫煙」描写の背景

 アニメ『ヤニねこ』『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』が2026年7月期に放送。9月から配信中のNetflixドラマ『ダウンタイム』では松岡茉優演じる外科医・沼田文の喫煙シーンが話題となった。

 カルチャーライターのジュウ・ショさんによると、タバコがテレビから“消えた”節目は'00年前後だという。

「1998年にタバコのテレビCMが業界の自主規制で姿を消し、'00年に『健康日本21』がスタート。'03年に『健康増進法』が施行、'05年には『たばこ規制枠組条約』が発効しました。

 喫煙シーンを直接禁じる法律はありませんが、スポンサーへの配慮からも自主的に避けられるようになりました。'00年代後半から'10年代に入るとその動きは本格化し、主人公がタバコを吸う『風立ちぬ』や『いだてん~東京オリムピック噺~』などに禁煙団体から抗議コメントが出されています」(ジュウ・ショさん、以下同)

 昭和~平成初期は番組司会者がタバコを吸い、ドラマの喫煙シーンが当たり前だった。

「でも、今は喫煙シーンが珍しくなった分、注目を集めるのでしょう。特に若年層は刺激的な画を求める傾向が強い印象です。民放では規制が厳しい一方、NetflixやABEMAなど配信系では、暴力団、水商売など以前よりアングラチックな描写が増えていることにも通じます」

 近頃の話題作では「愛煙家の若い女性」という属性が共通するが、その演出効果は。

「女性の平均喫煙率は平成元年〜現在にかけて10%ほどと少数派で、目を惹くキャラクターにはもってこいでした。当時から『非行・堕落』『反骨心』『クール』などの象徴としてわかりやすく、定番でしたが、近年では“鎧を脱げる時間”としての演出効果が大きい。

 例えば、『ダウンタイム』の沼田はクールに仕事を終えた後、帰宅して家族とコミュニケーションを取る際に喫煙していました。『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』の田山は清楚な笑顔から一転して、タバコを吸っています。職場で見せているのは、あくまで『役割の顔』であり、素顔は喫煙シーンで見せるという演出が共通しています」

ショートヘアに喫煙も相まって「やさぐれ感がメロい」という声も見られた松岡茉優主演の『ダウンタイム』(Netflix公式Xより)
ショートヘアに喫煙も相まって「やさぐれ感がメロい」という声も見られた松岡茉優主演の『ダウンタイム』(Netflix公式Xより)

 こういった演出はなぜ反響が大きいのだろうか。

「今の人々は、現実とSNSで異なる顔があり、またSNS上でもコミュニティーが細分化され、ペルソナの種類が増えました。だからこそ『役割を降りる』描写に共感が集まるのでは。

 何もしない時間の希少さという点も重要です。現代は常にスマホを見てイヤホンを耳に挿しているからこそ、タバコを吸うだけの時間に尊さを感じているという仮説もあります」

 煙たがられた演出が今後、復活を遂げるのか。

「コンプラを考えると、未成年向け作品から消える可能性は高いです。Netflixは抗議を受けて2019年に、アメリカの規格によるTV-14とPG-13(※)以下の作品で喫煙描写を削除することを決定しています。

 それに、喫煙率が下がるにつれて視聴者にタバコが受け入れられなくなることは大いにありえます。しかし、少なくとも今の30代以上はタバコが持つ演出効果を理解できる。そしてその代替の小道具はなかなかない。喫煙描写が消えるのは、数十年後になるのではないでしょうか」

※【TV-14】14歳未満の子どもには不適切である可能性があり、保護者の強い注意が必要なテレビ番組・配信
※【PG-13】13歳未満の子どもの鑑賞には保護者の強い注意喚起が必要な映画