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 高温で調理した野菜などには発がん性物質“アクリルアミド”が含まれ、摂取しすぎると健康に悪影響を与える可能性がある。そんな驚きの研究結果が、内閣府の食品安全委員会より発表された。

 研究に携わった国立環境研究所の薬学博士、青木康展先生に詳しい話を聞いた。

「アクリルアミドとは、ダムやトンネル建設時の接着剤などに使用するポリアクリルアミドの原料となる化学物質です。120度以上の熱を加えることで食品中に含まれるアミノ酸の一種・アスパラギンと、果糖やブドウ糖などの“還元糖”が化学反応を起こし、生成されます」(青木先生)

 野菜炒めやフライドポテト、トーストしたパンやクッキー、コーヒーなど、高温で調理されたあらゆる料理に含まれるという。具体的には、どのような健康リスクがあるのか。

「食品安全委員会の研究では、マウスにアクリルアミドを含む水を一定期間与えたところ、神経に悪影響が見られ、がんを発症する確率が高まりました。ただ、人ががんになる原因はさまざま。

 飲酒や喫煙などの生活習慣も関係しているため、アクリルアミドの摂取量と、がん発生率の直接的な関連は確認できていません」(青木先生)

 青木先生によると、常識的な量を食べる限り、健康被害を起こす可能性はほとんどない。

 だが、マウスでの実験結果を受けて、人へのリスクについても否定できないという結論が出された。アクリルアミドを減らすべく、いち早く対策を打ったのは食品業界だ。

「かつて含有量が多いといわれてきたポテトチップスについては、カルビーなど大手メーカーを中心に対策が進められ、平成19年から平成25年までの6年間でアクリルアミド濃度の低いポテトチップスを増やすことに成功しています」(青木先生)

 ただ、左のグラフが示すとおり、ポテトスナックやクッキーなど菓子類からのアクリルアミドの摂取は推定16パーセント。日本人の場合、5割以上を高温で調理した野菜から摂取しているため、家庭での対策が重要になる。

「食材の準備段階でできるのは、じゃがいもの常温保存。冷蔵すると、アクリルアミドのもととなる還元糖が増えるためです」(青木先生)

 冷蔵庫にじゃがいもがあるという人は、1週間くらい常温に戻しておけばOK。還元糖が減り、安心して料理に使うことができる。

「イモ類をはじめとする野菜は、切ったあとに十分に水にさらすこと。そうすることでアクリルアミドを生成するアスパラギンや還元糖が食材の表面から洗い流されます。

 例えば、れんこんの場合、10分間水にさらすだけで、アクリルアミド濃度が半分程度になりました」(青木先生)

 火力はいつもより弱めにして、焦がしすぎないようにするのがポイント。トーストも、薄めの焼き色がベター。炒めるときには、食材をよくかき混ぜ、一部分のみ高温になることを避けることも大切だとか。

「加熱の温度や時間が増えるほど濃度は高くなる。にんじんやじゃがいもなどは炒める前に電子レンジで軽く熱を加えたり、調味料を加えたらフタをして蒸し煮にするなど水を利用して熱を加える作業をはさみ、炒める時間を短くすることでアクリルアミドができにくくなります」(青木先生)

【家庭で注意したい調理のポイント】

・生じゃがいもは常温で保存し、高温加熱しすぎない

・イモ類、野菜類は1度水にさらした後、調理する

・炭水化物の多いパンなどの食材を焼きすぎない

・炒めるときは火加減を弱くして、食材を早くかき混ぜる

・120度以下で蒸す、煮る、ゆでるなどの調理法を利用