■本物がひとつもない!? 大塚国際美術館(徳島県)

 続いて、美術ライターの浦島茂世さんがオススメしてくれたのは、大塚国際美術館(徳島県)。

「大塚製薬が母体となる財団が運営している美術館なのですが、なんと全部が陶器の板で複製されたもの! ひとつも本物がないんです。でも、すべてが学術的レベルの、プロフェッショナルな複製。本当にリアルです。ピカソ、モネ、ルノワール、ダ・ヴィンチなど、世界中のありとあらゆる有名作品の複製が1000点余り展示されているんです。

 ラインナップでいったらルーヴル美術館以上どころか、世界一!(笑)複製なので近づいて見られますし、原寸大なのでサイズ感もわかる。子どもに画集を見せるよりも、ずっと効果的だと思いますね」

 美術館としては日本一、入館料が高い(大人3240円)が、それでも大人気なのだそう。

■『ちひろ美術館・東京』に込められた願い

「親子で楽しめるという意味では『ちひろ美術館・東京』がいいですね。生涯、子どもを描き続けたいわさきちひろさんの作品が展示されているのですが、キャッチフレーズは“マイ・ファースト・ミュージアム”。 子どもが、生まれて初めて行く美術館でありたいという願いが込められています。展示も子どもの目線で楽しめるように低め。踏み台もあります。小さい子どもでも楽しめますし、たとえ騒いだとしても大丈夫」(浦島さん)

草間彌生『かぼちゃ』1999年 (c)YAYOI KUSAMA 写真提供/松本市美術館
草間彌生『かぼちゃ』1999年 (c)YAYOI KUSAMA 写真提供/松本市美術館
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■草間彌生さんの常設展がある松本市美術館(長野県)

 そして、松本市美術館(長野県)を紹介してくれたのは、世界遺産検定1級、美術検定2級を持つ“美術芸人”の福本ヒデさん。

「“世界で最も影響力のある100人(アメリカ・タイム誌・2016年版)”にも選ばれた草間彌生さん。とっても派手でおしゃれな方で水玉模様の作品で有名です。出身が松本ということで、常設展で草間さんの作品が見られますし、エントランスや自動販売機、ベンチなども草間さんのアートが施されています。

 松本駅からラッピングバスも走っています。“ポップで楽しい”と思うかもしれませんが、草間さんは幼いころから幻覚や幻聴に悩まされ、それを絵に描いた人。そして、売れたのは70代になってから。87歳の今も、毎日描いていらっしゃるそうです。

 “なぜ、こんなクニクニしたものをたくさん作り、水玉ばかりを描いているのか”を感じながら見るのもオススメです」

■島全体がアート! 直島(香川県)

 さらに挙げてくれたのは直島(香川県)。瀬戸内海に浮かぶ小さな島は、島全体がアート。3年に1度開催される瀬戸内国際芸術祭のメイン会場でもある。

「美術館もいっぱいあるし、至るところにアート作品があるんですよね。草間彌生さんがデザインしたオブジェ『黄かぼちゃ』とか、現代アートの大竹伸朗さんによるとんでもない銭湯(『I(ハートマーク)湯』)とか。

 そんな中でも、ぜひ地中美術館へ。ここは世界的に有名な安藤忠雄さんが設計したんですが、“なるべく周りの景観を壊さないように”との配慮から、建物の大半が地中にあるんです。

 そして、ここにもモネの『睡蓮』があります。真っ白な部屋に、靴を脱いで入るんですけど、小さな踏み心地のいい石が敷き詰めてあって、上からは自然光が降り注いで。とても贅沢な時間が流れます」(福本さん)

※開館・閉館時間を訂正しました。