小川徹先生(国立病院機構嬉野医療センター皮膚科医長)

がんの罹患数は増加傾向にあり、国立がん研究センターの報告によると、2016年のがん統計予測は101万200例。初めて100万例を超えました」

 と言うのは、皮膚とがんの専門家、小川徹先生。

「増加の大きな理由は、高齢化が考えられます。高齢になればなるほど、がんのリスクは高くなり、高齢者が増えれば、それだけ、がん患者も増えていきます。

 この数字で注意したいのは患者数ではなく、がんと診断された数です。1人が2つ~3つのがんにかかることも少なくありません。転移の可能性もありますが、同時に違う臓器からがんが発症していることがあるのです。親が胃がんにかかったから自分も胃がん対策だけ行っていればいいということではなく、全般の予防が大切です。

 残念ながら日本より、がんの研究は欧米が進んでいます。私は欧米には研究などのため何度も行っていますが、驚かされることばかりです。欧米から発信される健康情報に耳を傾け、権威ある大学や医学雑誌からの情報を参考にすべきだと思います」

 以下、がんに関する最近の気になったニュースを集めてみた。

人工芝で活躍するGKたちが危ない

 サッカー少年&少女は注意! 人工芝でサッカーをしたアメリカとイギリスの女子サッカー選手34名が、なぜか次々と悪性リンパ腫の一種にかかったとのニュースが。日本では野球場や学校の校庭などにも使われているけれど……。

がん研究者の間でも、この事実に注目しています。私の知るところでは日本での報告はまだないようです」(小川先生、以下同)

 英国スターリング大学が人工芝の充塡剤となるゴムチップを調べたところ、発がん性物質が見つかったという。34名はいずれもゴールキーパーだそう。

「ゴールキーパーは人工芝で皮膚をこすることが多く、皮膚がん発症リスクもありうると考えられます」

“飲む日焼け止め”に、がん予防効果なし

 この夏、米メディアで話題を集めたのが“飲む日焼け止め”。UVだけでなく皮膚がんも防げちゃう?

「それはNG。米国皮膚科学会は、飲む日焼け止めを肌に塗るサンスクリーン剤の代替として使用すべきでないと呼びかけています」

 飲む日焼け止め単独の使用では、紫外線からの保護効果を示す科学的証拠が示されていないという。皮膚がん予防を考えるなら、できるだけ日陰にいる、長袖などの日光を避けられる服の着用、SPF30以上の耐水性日焼け止めを使用するのが正しい方法。

「ヒトが一生のうち浴びる日焼けの約50%は、思春期までと言われます。お子さんの日焼けは、きちんと防ぎたいものです」