古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第11回は山名宏和が担当します。

加藤浩次 様

司会としても引っ張りだこの極楽とんぼ・加藤浩次

 今回、勝手に表彰させて頂くのは加藤浩次さんである。

 加藤さんが出演する『この差って何ですか?』(TBS系・火曜夜7時~)の構成に僕も参加しているのだが、制作の現場にいると、加藤さんの司会者としての配慮にしばしば感心させられる。

 番組のオープニングで加藤さんは必ずゲスト一人一人に話をふり、丁寧にいじっていく。それだけで30分近くかかることもある。だが、番組を観て頂ければわかるが、このトークが使われることはほぼない。別につまらないわけではない。スタジオでは何度も笑いが起きているのだが、早く本題に入った方が横並びの番組と競うためにはよいという判断で、トークの大半をカットせざるを得ないのだ。

 頑張って喋ってもらっても使わないので申し訳ないと思い、「オープニングはもっと軽めで大丈夫です」とディレクターが言ったことがある。しかし、加藤さんは変わらなかった。

 ここに加藤さんの配慮がある。使われないとわかっていているのにゲストをいじるのは、場を温め、ゲストをリラックスさせるためなのだ。

「加藤さんは無駄なことでもちゃんとやってくれる」

 プロデューサーがそう感謝していた。たしかに使われないトークを長々やるのは無駄な労力である。だから、それをやらない司会者もいる。しかしよい雰囲気で収録を進めていくためには、必要な無駄である。加藤さんはそれをよくわかっているのだ。

 番組中の何気ないコメントにも、細かな配慮がある。コードレス式の掃除機をスタジオで紹介したときのことだ。その中の1台に自立するものがあった。ゲスト一同「いいね!」と褒めちぎる中、加藤さんだけは違った。