中学時代の“ほっこり”するエピソード

 稀勢の里を取材し続けている相撲ライターが語る。

稀勢の里は、貴乃花親方をすごく尊敬しているんです。実際、入門するときも、貴乃花部屋にしようか迷っていた。でも、孝行息子の彼は、より実家に近い鳴戸部屋に入門したようです。貴乃花親方自身も、以前から稀勢の里に目をかけていました。相撲界は、彼が頑張らないとダメだと。大切にしていた自分の腕時計をプレゼントしたほどです」

 中学校の同級生によると、

中2のときは合唱コンクールの練習が嫌で逃げ回っていたんです。それでよく女の子たちに怒られていましたね

 しかし、鳴戸部屋入門が決まった3年生のころには、

学校で過ごせる時間が少ないと気づいたのか、積極的にクラスの行事に参加するようになった。そして秋の合唱コンクールでは、みんなの前に立って指揮者をやったんです。不器用なんですが一生懸命、指揮の練習をしていました。

 担任の先生が“ゆたかにとって、みんなが最後のクラスメートになるんだよ”ってクラスで話をしたことがあるんですが、そしたらその合唱コンクールで優勝しちゃった。鳴戸部屋に入門するとき、そのときのCDを持っていって、稽古がつらいときに聴いたって話を聞いたことがありますね」(前出・同級生)

中学3年時の合唱コンクールでは指揮者に(稀勢の里資料室蔵)
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 稽古の厳しさで知られる鳴戸部屋。ひとりで地元から出てきた彼にとっては、仲間たちの声が入ったCDが心の支えになっていたのかもしれない。

 新弟子時代から稀勢の里を見ているという、松戸市の70代の男性は、

「昔は稽古を見学できたから、よく見に行ったよ。先代の親方は本当に厳しい人で、稀勢の里はいつも身体が土で真っ黒になるほど、倒され、鍛えられていたね。でもそのときに受け身を覚えたから、休場をしない頑丈な力士になったんだと思う」

 新たな戦いとなる三月場所は、3月12日から大阪で始まる。横綱としての初優勝はもちろん、綱取りに続いて嫁取りにも期待したいというのは大きなお世話か──。