「世界の女性100人」に選出され、BBCにコメントを寄稿した(BBCのHPより)
「世界の女性100人」に選出され、BBCにコメントを寄稿した(BBCのHPより)
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「がんや難病の患者さんが闘病する姿を見せるのは、欧米では普通のこと。タレントや著名人たちも自分の病気のことをものすごくしゃべりますからね。日本はどちらかというと病気などに関しては閉鎖的。日本人が自らの病気を発信するイメージがないので、麻央さんの行動は欧米の人にとって非常に目新しいものだったと思います。しかも、決してオーバーに“私不便している”と言ったりはしないわけですから」

 海外ではあまり見られない控えめな姿勢が、好ましいものと受け止められた。言葉遣いも、麻央さんが注目された理由のひとつらしい。

「麻央さんのブログの文章は文字が少ないので、欧米人には俳句のように見えるんですね。最近は海外でも俳句が知られるようになっていて、日本のミニマルな言葉遣いや、抑制のきいた表現が注目されています。麻央さんのブログは以前から人気で、海外のファンが英訳していました」(デーブ氏)

 繊細な文章だけに、英語でちゃんとニュアンスが伝わっているかが気になる。翻訳家の片山奈緒美さんは、「基本的には直訳されている」と話しつつも、原文からの改変部分をこう指摘する。

昨年9月に初めて投稿した「なりたい自分になる」を英訳したもの(『KOKORO.』より引用)
昨年9月に初めて投稿した「なりたい自分になる」を英訳したもの(『KOKORO.』より引用)

「最初に英訳されたブログの《私は力強く人生を歩んだ女性でありたいから 子供たちにとって強い母でありたいから》という一節は、英訳版だと“力強く”という言葉は出てこないんですね。

 かわりにcolorfullyという単語が使われています。これは“色彩に富んだ”や、“いきいきとした”という意味。ただ強くたくましく生きたというより、“いきいきと自分らしく生きる女性でありたい”という意志が表現されていると感じました」(片山氏)

 病気のカゲに隠れることをやめるためにブログを始めることを説明する文章も、麻央さんの強い気持ちが明快にわかるように訳されている。

「《でも、一度きりの人生なので、なりたい自分になろうと決意できたことはうれしいです》という文章があるんですが、英語では《なりたい自分になることに責任を持つ》という訳し方になっているんです」(片山氏)

 これまで麻央さんがどんな人生を送ってきたのか知らない人でも、彼女が持つ思いを理解できる文章になっているのだ。心配りのきいた訳文をいったい誰が書いているのか、海老蔵のマネジメントを担当する会社に問い合わせた。

「海老蔵さんから依頼されて、弊社のスタッフが英訳しています。ほかの言語にも訳してもらえないかというお問い合わせもいただいております」

 ひとりでも多くの人々に、麻央さんの言葉が届き、世界じゅうに希望があふれますように!