9月5日、京都府立医科大学の徳田隆彦教授らの研究チームが、血液からアルツハイマー病の診断をすることができる新たな検査方法を開発したと発表。2025年には認知症の患者数は700万人を超えると推計され増加の一途だ。認知症の治療は早期発見・予防が大切だと専門家らは話す。徳田教授に話を聞いた──。

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 今年8月、1滴の血液で13種類のがんの有無がわかるようになる研究成果を、国立がん研究センターらのチームが発表し、世間の関心を集めた。あれから1か月もたたない9月5日、今度は点滴2滴分の血液量でアルツハイマー病(以下ADと表記)かどうかが診断できる新たな検査方法が開発された。

 手がけたのは、京都府立医科大学の徳田隆彦教授らの研究チームだ。

「0・1ミリリットル以下の血液で検査が2回できます。1回の検査だと確かな数字ではないかもしれないので、最低でも2回行うのです」

 20年近くADの検査に関する研究を続けてきた徳田教授は簡単な検査で早期発見ができないかと考えてきた。その思いがいま結実しつつある。

「今までは、厚生労働省が認可している検査方法として、患者の背中に針を刺し髄液を採取して診断する方法がとられてきました。髄液の採取は、神経内科医しかできません。髄液をとると患者さんは頭が痛くなったりしますし、時間もかかる。当日になるとやっぱりやめたいと言う人も多いんです。一向に普及しない現状に、絶望していました」

 と、徳田教授は従来の非効率性を指摘する。だが新たに開発した検査方法であれば、

「髄液と違い、採血は看護師でもできますし、実用化されれば健康診断で行う血液検査なんかと一緒に行うこともできるようになる。髄液の場合は、血液が固まりにくくなる薬を飲んでいる人には行うことはできませんでしたが、採血であれば、手で押さえておけば血は止まりますからね」

 と、徳田教授は全面的に太鼓判を押す。

 そこまで早期発見にこだわるのはなぜか?

 認知症の専門医である順天堂大学大学院の田平武客員教授が現状を説明する。

「近年、ADの治療のためにさまざまな研究が行われていますが、どれもいい結果が出ていません。いまだ特効薬はないというのが現実ですね」

 そしてその理由は、

認知症になって、脳の神経細胞が死滅しズタズタになってから治療を行っても、効果が出ないのではという考えですね。ADが発症する前、発症していてもごく軽度な状態で治療を行うことが大切です。その段階であれば、認知機能を高めることで症状は十分に回復することもあるのです」