それにしても、スキー場での噴火災害は想定外だった。

 日本山岳ガイド協会の武川俊二常務理事は「スキー客は基本的に観光客です」として次のように指摘する。

噴火災害への意識は登山者とは異なります。あくまでそこはスキー場であって、火山や山という意識は薄い。スキー指導員でもほぼ同じ感覚でしょう。火山は緩やかな斜面が多く、畑や民家もないのでスキー場開発には適しています。

 だからこそ開発者や運営・管理者は噴火などさまざまな危険を把握し、スキーヤーに適切に案内することが求められる。スキー客に危機意識を持てと迫るのは酷です」

 一方、登山客は御嶽山噴火前とは大きく変わったという。

「山へ行くときはヘルメットをかぶりましょうとの呼びかけが長野県から始まり、広がりをみせています。ヘルメットを常備する山小屋が増えました。転滑落時の備えでもあるんですが、火山に来ているという意識を高めるのに役立っている。御嶽山噴火から一気に変わりました。もう同じ失敗はしない、犠牲者は出さないって」(武川常務理事)

 さて、今回の草津白根山の噴火は何を意味するのか。立命館大学・環太平洋文明研究センターの高橋学教授(災害リスクマネジメント)は「2011年3月の東北地方太平洋沖地震の後遺症」とみる。

「マグニチュード(M)8・5以上のプレート型地震は世界中で11回あり、発生後に火山が爆発していないのは3・11だけです。

 地震の約半年後から約5年以内の数か月ごとに大噴火や小噴火が連発するケースが多く、1つの火山の噴火では終わりません。草津白根山は小規模な水蒸気噴火とみられますが、これは東日本で連発する噴火の始まりとみています」という。

ノーマーク火山の対応はどうなる?

 高橋教授は『週刊女性』'15年10月6日号で「ここ1~2年以内に大噴火が起きそうな10火山」として草津白根山を挙げており、約2年3か月後に同山は噴火したことになる。なぜ、プレート型大地震は火山噴火を誘発するのか。

「東北地方太平洋沖地震で陸側の北米プレートが跳ね上がり、つっかえ棒のとれた海側の太平洋プレートは約3~4倍にスピードアップして北米プレートの下にもぐり続けています。

 地表から約200~500キロメートルに達すると溶けてマグマになるので大量生産に拍車がかかり、いずれ火山のマグマだまりが耐え切れなくなって岩盤を突き破って噴火する。北方のロシア・カムチャツカ半島では約3年前から5つある火山がすべて噴火しており、昨年12月20日に大噴火したベズイミアニ山は噴煙が上空1万5000メートルに達しました」(高橋教授)

 南米チリ中部で'10年に起きたマウレ地震(M8・8)では、半年後に火山の噴火があり、'14年に集中噴火が発生。いまも後遺症の噴火は続発しているという。