若松監督との出会いと
月9ドラマへの出演

 是枝裕和監督との出会いと同じぐらい大きな転機だったと語るのが、日本インディペンデントの巨匠とも呼ばれる若松孝二監督。’08年公開の映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』以降、晩年の若松作品5作品すべてに出演。

「若松監督が『実録・連合赤軍』を撮ると聞いて、いても立ってもいられなくて、初めて自分から“オーディションを受けさせてください”と動きました」

 すでにメジャー作品で主要キャストを経験していただけに、現場にいた役者たちからの目は厳しかったという。

「当時はまだARATA名義だったので、“アルファベットでやっているやつが何でいるんだよ”といった視線は感じました。僕自身は1度ドロップアウトしている身でそんなつもりはまったくなかったから“こいつらには絶対負けない”と逆に燃え上がりました(笑)。そういう闘志むき出しの現場だったから、若松組で過ごした者たちの中に、今でも同志だなって思える人が生まれましたし、初めて自分からぶつかりたいと思った監督と現場でした」

井浦新 撮影/廣瀬靖士

 若松監督と出会った同時期、プライベートでも人生の伴侶を得る。そして’10年には長男が生まれ、父親に。

結婚が演技に反映されているかはわからないけど、父親になったことで生き方や考え方は広がりました。これまで以上に挑戦したいという欲も出たし、生きることが楽しくなりました」

 若松監督に「怖がっていないで、来た仕事は全部やりなさい」と言われたこともあり、これまでは考えもしなかったというテレビドラマにも本格的に進出。’12年放送の月9『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)は話題に。

月9だったんだと思うと今さらゾクッとします(笑)。若い世代でずっとトップを走っている小栗旬くんの座長としての姿からは大きな刺激をもらったし、石原さとみさんともここで築いた信頼関係があったからこそ、後の共演作品にもつながっていったと思うので、経験させてもらえてよかったです」

 その後は作品の規模に関係なく、数多くの作品に精力的に出演している。

「僕自身の根っこは変わっていないんです。育ててくれたのはインディペンデントな環境ということもあり、メジャーな作品だから……みたいな概念があまりないんですよ。自分の信念さえ持っていれば、活動の場はどこでもいい

 残念ながら『アンナチュラル』は最終回を迎えてしまうが、土曜日からは主演を務める映画『ニワトリ☆スター』が公開。過激な描写も含んでいるため、R―15に指定されているが、こう話す。

「『アンナチュラル』も本当に伝えたい部分を描くために死体も見せなきゃいけない。表現方法は違うけど、この作品も目を覆いたくなる部分があるからこそ、本当に美しいものが見えてくると思うんです。楽しさっていろんな形がある。中堂系役で興味を持ってくれた方が、この作品を見ようと思うキッカケになってくれたら、僕にとってはいちばんうれしいことですし、いい意味で裏切れたらいいです」