「家で窓を開けて掃除をしているとき、外から“手から血が出ている!”と叫び声が聞こえたんです。慌てて外に出てみると、石橋さんの奥さんが手首から血を流してしゃがんでいるのが見えました。自転車に乗った女性が、119番通報をしてくれました。

 私は止血するために、1度家にさらしを取りに戻り、また出てくると、今度はご主人が家から出てきました。お腹のあたりが血で真っ赤だったんですが、最初は奥さんの返り血を浴びたものと思っていたんです

「死なないで!」と叫ぶ妻

 近所に住む男性が振り返る修羅場の救出劇。別の60代の男性住民も異変に気づいて駆けつけたときには、

「奥さんが道路のわきに座っていて、手がブラブラな状態でした。ご主人は地面に、大の字で寝ていました」

 傷口の腹部をさらしで縛る際、「ご主人は歯を食いしばっていました」と冒頭の男性が再び続ける。

「意識はありました。“柳刃包丁……”とかすかに言っていました。救急隊員の呼びかけにも、名前をはっきり答えていたんですが……。ご主人がガクッと意識を失ったとき、奥さんが“死なないで!”って叫んだんです。あの悲痛な声が……忘れられません。娘さんに刺されたと話すことはありませんでした」(前出・救助に当たった男性)

 神奈川県茅ヶ崎市東海岸北。JR茅ケ崎駅から徒歩で6分ほどの閑静な住宅地で凄惨な事件は起きた。

「6月3日午後5時20分ごろ、包丁で父親の胸部を刺して、母親の左腕を切りつけ殺害しようとしたが目的を遂げなかった」と捜査関係者。