たった1人への説明のみで埋め戻しが進行

 一方、再利用ではなく、汚染土を「埋め戻し」する実証実験も進められている。これは、汚染状況重点調査地域に指定された市町村が行った除染により、民家の庭先などにフレコンバッグに詰めて埋められた汚染土を、掘り出して集め、袋から取り出して埋め戻すという計画だ。「何のために除染したのか」と疑問の声が相次いでいる。

埋め戻しにより放射性物質が地中に浸透するおそれを指摘する那須町の住民たち
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 福島県外の自治体では、除染事業主体である自治体が最終処分まで行うことになっており、最終的な行き先は決まっていない。しかし、埋め戻しの実証実験で安全性が確認されれば、汚染土を保管するほかの自治体でも、同じように埋め戻す可能性がある。

 実験では、定期的な浸透水の確認、空間線量の測定、作業者の被曝線量の管理を行うことになっているが、そもそも実験期間はわずか数か月。住民からは、「通年で気候を見ずに安全性がわかるはずがない」という声があがる。

 汚染土埋め戻しの実証実験に選ばれた土地は、那須町が所有する廃校になった伊王野地区のグラウンドの一角にある。2月1日、地元紙・下野新聞が実証実験について報じた4日後、伊王野地区の下町行政区と上町行政区に、それを知らせる回覧板が回った。

 周辺住民への説明を回覧板ですませようとする環境省の姿勢は、二本松市と同じだ。

 下町行政区に住む田中美津子さん(仮名)は、この実証実験をテレビ報道で知った。田中さんは偶然、回覧板を回す班長だったから原本を持っているが、ほかの住民は、実証実験の詳細を示した紙すらもらっていなかった。

「(埋め戻されたら)汚染土か、そうではない土か、わからなくなる。どうするの? と思った」(田中さん)

 環境省の不誠実な手続きや、安全性に疑問を抱いた田中さんは、町の環境課に問い合わせ、「説明会はないのか」と尋ねた。すると、「該当する土地の周辺住民に伝えたのでやらない」との回答を得る。

 しかしその後、「周辺住民」として町が説明した相手は、たった1人だったことが発覚。町の環境課は、その事実を認めたうえで「代表者から役員に聞いてもらい、“回覧板でお知らせしてほしい”という要望をもらった」と、地元の意向であったと主張する。

 那須町に住む一般社団法人『被曝と健康研究プロジェクト』代表の田代真人さんは、2月から住民説明会を町に求めた。実証実験をテーマにした学習会を開催し、チラシを戸別配布するなど実証実験に疑問を持つ仲間とつながっていった。3月、那須町に対し、実証事業への提案申入書を提出。5月には田中さんらと環境省へ要請書を提出した。