時給72万円のオイシイ仕事

 しかしボランティアが基本の親族後見人に対し、職業後見人には報酬が発生します。報酬額は被後見人の預貯金額に比例し、1000万円以下だと年間24万円、5000万円を超えると年間に72万円ほど。これは弁護士などからすれば少ない額かもしれませんが、年金生活者が多い認知症高齢者などにとっては大きなお金です。

 むろん職業後見人が報酬に見合う仕事をしてくれるならいいのですが、実際には、職業後見人が本人のために行うのは、本人の通帳を預かることと、年1回、家裁に後見事務の報告書を提出するだけというケースがほとんどです。

 報告書はチェック方式ですので、記入にかかる時間は30分程度です。要するに、職業後見人が本人のために使う労力は、1年間に30分からせいぜい小一時間程度に過ぎません。つまり、弁護士や司法書士から見ると、時給24万円とか72万円のオイシイ仕事というわけです。

 私が話を聞いた家族たちは、一人の例外もなく、皆、こう嘆いていました。

「弁護士や司法書士後見人は認知症高齢者への関心や共感がまるでない。彼らは認知症高齢者のために何もしない。それなのに認知症高齢者や知的精神障害者の財産から、年間数十万円もの、少なくない報酬を取っていく」

 ところが、現在の成年後見制度では、「何もしない」という理由だけで職業後見人を辞めさせることはできない、おかしな仕組みになっています。後見人の解任の権限は家裁にあるのですが、何もしないからという理由で家裁が職業後見人を解任することは、まずありません。

 つまり、いったん職業後見人がついたら、何もしなくても、認知症高齢者や障害者は自分が死ぬまで延々と、報酬を払わされ続けるのです。

 成年後見制度を利用したばかりに、人生を狂わされ、絶望している人たちが大勢います。

 ところが、こうした実態はほとんど社会に知られていません。なぜでしょうか。

 国(家裁)、法律専門家(弁護士、司法書士)、自治体など、この制度を推進する側の圧倒的な力を前に、ほとんどの市民が泣き寝入りしているからです。

 2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推計されています。知らないうちに後見人がつけられてしまい、自由を奪われてしまった――あなたが、そんな悲劇に巻き込まれない保障はどこにもありません。後見トラブルは決して他人事ではないのです。

文/長谷川学(ジャーナリスト)

ジャーナリストの長谷川学氏

<プロフィール>
長谷川学(はせがわまなぶ)
1956年生まれ。早稲田大学卒業。講談社『週刊現代』記者を経てフリー。週刊現代では当時の小沢一郎民主党代表の不動産疑惑(後に元秘書3人が政治資金規正法違反で有罪)をスクープ。今年3月に『成年後見制度の闇』(飛鳥新社刊・一般社団法人「後見の杜」の宮内康二代表との共著)を上梓。