外国人労働者に対する日本人の理解も不十分

 もうひとつの課題が、日本人と外国人がどこまでうまく共生できるのかということ。

外国人が来ると治安が悪くなる、犯罪が起きやすくなる」という声も聞くけど、待遇の底上げをしない、あるいはキツい条件のまま外国人労働者で穴埋めしようとするのは“使い捨て”の発想だし、当然トラブルも起きやすくなるよね。外国人労働者を人間ではなく、単なる労働力として扱うことでパワハラや労災事故、差別行為などにつながるケースも各地で頻発しています。こうした現状も、外国人と日本人の溝を深めていると思うのです。

 また、コンビニで働いている外国人労働者をよく目にしますが、どうしても単純労働者をイメージしがち。だけど、昨今、日本に来ている彼らは語学力やコミュニュケーション能力、日本社会への対応力もあって優秀なんですね。

 すると、優秀な外国人労働者に職が奪われるから、自分たちの足元を脅かすからという理由で、一部では不満の矛先が外国人に向けられることもあるんですよね。これはアメリカやヨーロッパの現状を見ればわかることです。

 だからこそ、優秀な外国人とも対等に競争できるように、自国の教育ひとつ取っても変わる必要がある。外国人を受け入れ、対等に張り合える、グローバルマインドを持てるような教育をするべきだと思います。

 ただこの点に関しては、将来的な心配はしていません。私が日本に来た40年前は、学校でも外国人は物珍しくて「ガイジンだ!」と後ろ指を指されたものだけど、いまはもう外国人は物珍しい存在ではないんですね。

 息子が通ってきた学校にも海外でのバックグラウンドを持つクラスメートがいたりするんだけど、すっかり馴染んでいます。いまの子どもたちにはグローバルマインドがあるんですよ。政府は何もできていないけど、コミュニティのなかは勝手に、着実にグローバルになっている印象を受けるんです。

 私も、外国人労働者の受け入れには反対しません。少子高齢化の進む日本において、受け入れは不可欠でしょう。だけど、何も準備できていないこの状況下で行うのは、まだ早すぎる。慎重になるべきだと改めて思うのです。

<構成・文/岸沙織>