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「ひきこもりに定義はありますが、私の思うひきこもりというのは、人間関係を自ら遮断せざるをえない状態のことだと思っています。その背景にはもちろん、さまざまな要因が考えられます」

 特定非営利活動(NPO)法人『KHJ全国ひきこもり家族会連合会』のソーシャルワーカー・深谷守貞さんはそうとらえている。

 5月28日、川崎市で私立カリタス小学校の児童を狙い、保護者を含む20人が殺傷された事件で、容疑者が「ひきこもり傾向にあった」「親族からおこづかいをもらっていた」事実が浮上。

 6月1日、農林水産省の元事務次官の父親が44歳の長男を刺殺した事件では、川崎の事件が脳裏をよぎったのか、「息子も周りに危害を加えるかもしれないと思った」などと供述しているという。また「長男はひきこもりがちで家庭内暴力があった」という家庭事情も明らかになってきた。

中学生時代の岩崎隆一容疑者

 両事件で注目されている“ひきこもり”という言葉。あたかも、ひきこもりの人だから罪を犯したかのようにとれる報道に対し、偏見を助長することのないよう声明文で求めた一般社団法人『ひきこもりUX会議』の代表理事・恩田夏絵さんは、

「ひきこもり=病気や犯罪者予備軍ではないと明確に申し上げます。当事者同士の集会など通じ、ひきこもりが有識者や専門家と言われる人たちの見解で論じられてきたことの怖さを実感しています」

 と指摘。ひきこもり当事者と上手にコミュニケーションをとる方法についても「一概に言い切れるものではない」(前出・恩田さん)としながらも、イメージ先行の報道に歯止めをかけるために取材に応じてくれた。

家族とは別々に食事をとることは問題ないか

「大切なのは本人の意思を尊重すること」(前出・深谷さん)

 本人も家族も一緒に食事をする準備ができていない可能性が高いという。続けて深谷さんは、

「家族で食卓を囲むときに声をかけても来ない。そういう方は夜中にひとり、部屋から出てきて食事をとる場合が多い。また、別々に食事をとる場合、部屋の前までもっていくこともあると思いますが、それが一種のコミュニケーションの手段になる場合もあります」

 前出・恩田さんの見解は、

「ご飯を一緒に食べたほうがいいのかどうかという疑問が出る時点で家庭内での関係がよいとは言えないので、一緒に食事をとる以前の問題だと思います。家族とうまくコミュニケーションができていれば、一緒にご飯を食べることに疑問を持たないと思います」

勤労意欲を失わないようこづかいは与えなくていいか

「あげたほうがいい」と指摘するのは深谷さん。

「自分が自由に使えるお金があるというのはひとつの安心感になると思います。ひきこもりの人たちはひきこもることにエネルギーを使っているのでお金はほとんど使いません。趣味にお金を使うということは生きる意欲が高まってきている証拠ですので、その意欲を満たすためのおこづかいであれば、ひきこもり回復にはよいのかもしれません」

 一方で、気をつけなければならない点もあるという。

「だらだらとお金を出し続けるのは考えものです。限度を決め、それをきっかけにコミュニケーションがとれるとなおいいかもしれません」

 恩田さんはこの質問には根本的にズレがあると指摘しつつ、

「おこづかいが高額だからといって勤労意欲がなくなることはないと思います。私たちが実施している当事者会や実態調査によると、約7割の人が就労したいという意思がある。怠けてもいいというよりも、むしろなんとかしなきゃいけないと思っているんです」

 当事者は必死なのだ。

会話したがらないとき、手紙のやりとりは効果的か

「コミュニケーションのツールとしてはよいと思います」

 と深谷さん。