これが視聴率低下の最大の理由と考えられるが、3点目も念のため挙げておこう。

 3点目は、大河というより「朝ドラ」みたいだから「朝ドラ」でやってほしいという意見。確かに、22回は人見絹枝ほか女性たちが、女性はこうあるべしという、主に世の男性の意見から解放されたいという思いにあふれた爽快極まりない話なうえ、現代の女性問題ともフィットした社会性もたっぷりで、朝ドラでやっていたら25%くらいとれたかもしれない。

 こうして第1回は15.4%だった『いだてん』の視聴率が徐々に下がり、第6回から1桁が続き、現在、6.7%となったと考える。ここからは、ではこの孤高のドラマの存在意義があるかだが、答えはある、だ。

 視聴率が下がったとはいえ、第18~21回までは8%台が続き、潜在的な視聴者はそれくらいは必ずいるのではないかと見られていた。実のところ、これくらいの視聴率があれば、決して世間が背を向けているとはいえない。むしろ作品を徹底的に応援するコアな視聴者がたくさんいるという見方ができる。それには前例がある。

高視聴率=人気とは限らない理由

 まず、『おっさんずラブ』(2018年テレビ朝日)。平均視聴率が4.0%。最高でも5.7%だったが、SNSでの反響が回を増すごとにアップし、終了後も映像ソフトや書籍など関連商品の売れ行きがよく、映画化(今夏公開)もされ、テレビ朝日の2018年度の売上に大幅に貢献するほどのヒットとなった。

 次に、『コンフィデンスマンJP』。ドラマ版(2018年フジテレビ)の平均視聴率は8.9%で全10話、すべて1桁だったが、5月に公開された映画版は6月10日時点で興収22億円を突破し、早くも第2弾制作が決定した。

 視聴率とは世帯視聴率を指し、ビデオリサーチのサイトによると「テレビ所有世帯のうち、どれくらいの世帯がテレビをつけていたかを示す割合」とある。地域によってサンプルとなる世帯は違い、関東地区は900世帯となっている。他地区よりも最も多く関西は600、そのほか200世帯なので、視聴率といえば関東地区のそれが基本として話題にされる。

 われわれはこの世帯数と地域の人口を考慮して、だいたいの視聴人数を勝手に想定しているわけだ。そのため番組を視聴している正しい人数がわからないことと、サンプルになっている世帯が明かされていないため、代わって、録画率や再放送やBSなどを見た総合視聴率、SNSなどで取り上げられる視聴熱、配信で見られた数など、新たな指標が模索されているところだ。