存在しないメダカまで売られている

 ではなぜ、こういった事態が起きてしまうのか。

「メダカブームにかこつけて、投資目的でメダカを売買する業者も昨今増えています。私のところで育てた『三色メダカ』が、転売されて5万、10万の値段で売られているのを見ると、ホント悲しい気持ちになります。

 また近ごろ、テレビなどで『赤いメダカ』が高級メダカとして話題を集めていますが、メダカの色素は、白・黒・黄色の3色なので、現実問題『赤いメダカ』は存在しません

 新品種をつくり出すことは、メダカを育てる醍醐味でもありますが、売る側もただ売れればいいではすまされない。もっと自覚を持ってほしいですね」

 メダカの販売は、資格もいらず簡単に始められる。この手軽さが、こうした問題を生んでいるのかもしれない。

 また、飼育できなくなったメダカの放流についても、苦言を呈する。

「日本にもともといたメダカは東北から北陸にかけて日本海側に生息する『キタノメダカ』と、本州の大部分と九州などに広く生息する『ミナミメダカ』の2種類。これら野生のメダカが地域の特性を生かして生息してきました。

 もし、そこにほかのメダカが混ざると原種がいなくなるのはもちろんのこと、地域の特性に反するため模様が補色の役割を果たさず、鳥などに食べられてしまうケースも増えてしまう。いくら絶滅危惧種とはいえ自然にかえすのは、人間のエゴです

 手軽に飼えて小さいとはいえ、メダカも犬や猫と同じ生き物。飼うからには、命を取り扱うという責任が生まれることも忘れてはならない。


《PROFILE》
青木崇浩さん ◎メダカの販売、繁殖を行う株式会社あやめ会の社長。『メダカの飼い方と増やし方がわかる本』(日東書院本社)など著書多数