二重生活の背景に見えたもの

 3年ほど前に「公営住宅では猫は飼えないから」「体調もよくないから」と母親は、容疑者のマンションで生活するように。

事件現場となった容疑者の部屋からは、異臭などの苦情は出ていなかったよう
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 しかし、公営住宅の部屋の契約は、いまも解約されてないという。

 確かに現在も、ポストと表札には「戸田」の名前がついたままになっている。

「なぜ解約しないのか尋ねたら、お母さんも息子さんも“荷物がゴミ屋敷のようにいっぱいだから、そのまま残している”というんです」

 と話す近所の住人はこう疑いの目を向ける。

「でもいま考えると、生活保護や年金の詐取のために、団地に住所を残していたのかもしれませんよね。母親の遺言なんてきれいごとですよ」

 扶養できる親族がいたり家賃が高い部屋に住んだりすれば、生活保護の受給はできない。

 だから母親は、息子のもとに通う“二重生活”を送っていたのではという。

「お母さんの金は息子さんの家賃と生活費に使っていたのかもしれません。息子さんが若いとき、お父さんに内緒でバイクを買ってあげたこともあるお母さんですから。お父さんも“妻は息子には甘いから”とこぼすほどでした」(同・住人)

 そして2年前、母親が死亡。

 そのとき、わが母を手厚く葬ることよりも、容疑者の頭に真っ先に浮かんだのは、これからの生活についてだったのかもしれない。

 今度は、母親が生きていることを偽装するために容疑者による“二重生活”が始まったようだ。

 公営住宅の古参の住人がこう証言する。

「3年くらい前から息子さんは以前にも増して団地に通いつめていました。たまった郵便物を整理したり、自治会費の納入をしたり。2年前にお母さんが亡くなっていたなんてまったく気づきませんでした……」

 しかし、昨年11月ごろから母親の所在確認のため、たびたび警察が公営住宅の部屋を訪れるようになった。

 12月には容疑者のマンションにも捜査の手が─。

 逮捕後は、「精神的に疲れた……」とも供述しているという容疑者。

 母親の亡骸と暮らし続けていたことはもちろん、2年前からの偽装工作の疲れや、罪が発覚することへの重圧があったのかもしれない。