2003年に来日した白さんは2009年に日本の大学を卒業し、働き始めた。だが、就職した企業が2回連続で倒産し、2013年に独立して今の仕事を始めた。マスクを買うために使った14万円は、「たいした額ではないとまでは言えない。サラリーマン時代は月給が20万円だったから。でも今は、家族4人で安定した生活を送れている。払えない額ではなくなった」と語る。

 また白さんは「2012年に尖閣諸島をめぐって日中関係が悪化したとき、中国人は日本車をボコボコにしたりした。それなのに今回、多くの日本人が中国にマスクを送ってくれて感動した。だから自分もできることをした」とも口にする。

 だがこの1カ月半、自分の利益のことしか考えていない高値での転売行為も後を絶たない。1カ月以上にわたってオークションサイトへのマスクの出品を繰り返し、売り上げが計888万円にまでのぼった静岡県議の話は、日本人の怒りを買っただけでなく、中国のSNSにおいてもトレンド入りした。

中国でもマスク値上げの取り締まり強化

 世界各地においても、似たようなデマが流れ、トイレットペーパーがなくなり、マスクの奪い合いも起きている。新型コロナウイルスによる死者が1000人を超えたイタリアでも、ECサイトでマスクや消毒剤が値上げされ、当局がアマゾンやイーベイの調査を始めたと報道されている。

 一方で最初に感染が拡大した中国は、EC企業自身が転売ヤーや、便乗値上げに対して強権を発動した。EC最大手のアリババは、マスクの値上がりを確認した翌日の1月21日、出品者に対して値上げの禁止を通知した。

 さらに2月下旬にはアリババや、京東商城(JD.com)などEC大手5社と北京当局が連携し、1つのプラットフォームで違反した出品者を、5社のすべてのサービスから締め出すことを決めた。

 日本の状況はどうだろうか。アマゾンやフリマサイト「メルカリ」での法外な価格でのマスク出品は1月末から指摘されていたが、当初は黙認された。

 だが転売目的の買い占めは、マスク不足に拍車をかけ、医療機関でもマスクが足りなくなる事態にまで直面。政府は3月10日にマスクの高値転売禁止を閣議決定した。違反者には1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられる政令が3月15日に施行された。これを受け、メルカリも13日、衛生マスクの出品を一律禁止にした。