還暦もサーッと過ぎていった

 毎週月曜日の夕方5時半から都内の体育館で行われている練習を覗いてみた。

 まず30分近くかけて入念にストレッチをしてからダンスの練習に入る。アップテンポな音楽に合わせて、ポンポンを振りながら、さまざまなステップを踏む。同時にフォーメーションに合わせて目まぐるしく移動。うまくそろわないところがあると、音楽を止め、コーチのかけ声で、何度も繰り返す。

練習中はいつも真剣。結成当初は1年に1曲のペースで仕上げていたが、20周年記念の大会では11曲踊った
【写真】リモート取材でオレンジ色のウイッグをかぶった、おちゃめな滝野さん

 途中、給水の休憩を何度かはさみながら、8時まで練習が続いた。最高齢の滝野さんも最後まで軽快な足どりだ。

 すべて自主運営で、体育館を借りる費用、コーチの謝礼など含めて、月謝は5000円。通常の習い事より安い。

 入会の条件は「55歳以上」「自称・容姿端麗」。年に1回のオーディションを経て入会する。一列に並んで足を高く上げるラインダンスや、人の上に乗るスタンツという大技をやることもあるため、柔軟性や振り付けを覚える早さなどをチェック。入会を断ることもある。

 平均年齢は70歳で、滝野さんを含めメンバーのほとんどは、チア初心者だ。ダンスの経験がある人も少ない。

 筒川裕美さん(56)は50歳のとき、テレビでジャパンポンポンを見て憧れ、55歳になるまで待って入会した。

「ジャパンポンポンは体育会系です。習ったものは次の週には各自、仕上げてきて、その根性がすごいです。先輩方はいつもおしゃれで美意識も高いので勉強になります。楽しいです」

練習中はいつも真剣。結成当初は1年に1曲のペースで仕上げていたが、20周年記念の大会では11曲踊った

 入会19年目という小山芳子さん(75)は、「老体に鞭打ってやっています!」と笑う。

「なんか、ここにいるとみなさんが楽しく頑張っているから、あまり年齢を感じないです。悲観的にならずに還暦もサーッと通ったし、いつの間にか後期高齢者になっちゃった(笑)」

 驚いたのは、体育館の端にビデオカメラがずらりと並んでいたこと。練習風景を撮り、できなかったところを家で自主練習するためだという。

「とにかくみなさん、意欲的なんです。初めて指導したとき、私のほうが酸欠になりかけたくらい(笑)」

 そう話すのはコーチの長峰美紀さん。長峰さんはアメリカの団体USA(United Spirit Association)の日本支部副代表を務めチアの指導・育成をする傍ら、プロ野球のチアリーディングチームの指導もしている。

「若い子のように高く跳んだりはできませんが、レベルは高いと思います。簡単な動きを続けるより、速い曲に合わせて、より難度の高いことに挑戦するほうが、楽しんでやってくれますね。

 シニアのチアチームが増えていると聞きますが、滝野さんが最初に始められて、ほかの方たちにも火をつけたのは間違いないと思います。こういうチームを日本で作ろうと思ったこと自体、すごいバイタリティーですよ」

 滝野さん自身は「身体も動かなくなってきて年々、大変になっている」と苦笑する。それでも20年以上続けている理由を聞くと即答した。

「楽しいからやっているのよ。それだけ。結成7年目にチャリティーショーをやってアンケートを取ったら、“勇気づけられた”“元気をもらった”と書いてあって、本当にビックリしました。楽しんでやっていることって、見ている人にも伝わるんですね」