年金は10年で1割は減る

 では実際、いくらあれば老後の備えに足りるワケ? 北村さんは、わが家の「老後家計の予想」を書き出してみることをオススメする。

「自分が将来もらえる年金は、日本年金機構のサイト『ねんきんネット』で試算できます。50歳以上の人は『ねんきん定期便』に見込み額が載っているので、そちらを確認しましょう」(北村さん)

 そして、写真ページ(週刊女性PRIMEのサイト内)の「老後資金Checkシート」に載せた家計調査年報(夫婦は夫・会社員で妻・専業主婦、シングルは会社員という設定)の内訳を参考に、わが家の収支予想を書いて、平均値との違いをチェック。老後30年分の不足額も計算してみよう。

「ただし、これで計算した不足額でさえ、まだ甘いと言えます。支給を抑制する仕組みが発動されるたび年金は実質的に目減りしていき、10年で1割は減ります」(北村さん)

 前出・森永さんも「早めに厳しい見通しを立てたほうがいい」と、アドバイス。

老後資金は通常、65歳から95歳まで30年生きる前提で計算します。でも、女性の場合は100歳まで生きる人が約2割もいるんです。65歳から40年は生きると考えておいたほうがいい。そうなると、必要な老後資金は約1・3倍に増えます」(森永さん)

 現在の年齢によっても、必要な老後の備えはおのずと変わってくる。

 老後が迫っている50代以上の人は、「まず、基本の年金を満額もらうこと。そのうえで、もらい始める時期を考えましょう」と、北村さん。

 基本の年金を満額もらうには、40年にわたって保険料を納めることが条件。そのため、例えば大学卒業まで20歳~22歳の間、国民年金保険料を納めていなかったり、その後も滞納があったりすると年金を減らされてしまう。

「これを穴埋めする方法は2つ。ひとつは60歳以降も厚生年金に加入して働くこと。収入も将来の年金も増えて一石二鳥です。パートでも大手勤務なら厚生年金に加入できますし、2024年からは従業員51人以上(現在は「501人以上」)の企業にも厚生年金が適用拡大されます。あるいは、満額に足りない期間の分、60歳以降に国民年金に任意加入して保険料を払えば、満額もらえるようになります」(北村さん)

 年金をもらい始める年齢は原則65歳。しかし、スタート時期を1年以上遅らせて「繰り下げ受給」すると、年金の総額を増やすことができる。もらい始める時期を1か月遅らせるごとに0・7%増えて、70歳まで遅らせると、なんと42%アップ! しかも、増えた年金額は生涯続くそう。

「ただし、繰り下げ受給しても81歳11か月よりあとにならなければ、65歳からもらい始めた人の年金総額を上回ることはありません。男性は平均寿命が81歳ですから……、微妙なところですね。それより余命の長い女性の場合、繰り下げ受給したほうが得する可能性は高いです」(北村さん)