近年の“アニメ推し”はなぜか

 近年は視聴率が奮わないなど、人気が低迷しているという声もあるが、依然として大みそかの“日本の風物詩”であり、日本一の“お茶の間番組”である紅白歌合戦において、“マニア向け”とされてきたアニソンが多く取り上げられている。今年の紅白歌合戦も、出場者の歌唱曲はまだ発表されていないものの、以下のアニソンが歌われるだろう。

・『炎』(LiSA)…アニメ映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』主題歌 ・『DADDY ! DADDY ! DO ! feat. 鈴木愛理』(鈴木雅之)…TVアニメ『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』オープニングテーマ ・『NAVIGATOR』(SixTONES)…テレビアニメ『富豪刑事 Balance:UNLIMITED』のオープニングテーマ/もしくは同じくSixTONESで、テレビアニメ『半妖の夜叉姫』のオープニングテーマとなった『NEW ERA』 ・『Stories』(Snow Man)…テレビアニメ『ブラッククローバー』オープニングテーマ ・『Prover/Tell me』(milet)/テレビアニメ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』エンディングテーマ

 振り返れば、'83年に杏里がテレビアニメ『キャッツ・アイ』(正しくは「・」はハート)のオープニングテーマだった『CAT'S EYE』で出場するなど、紅白歌合戦でアニソンを披露するアーティストは過去にも複数組いた。とはいえ、近年の“アニメ推し”はなぜなのか。

「2010年代に入り、アニソンシーンがマーケットとして音楽業界内で巨大化したことで、多くの人気アーティストたちがアニソンを手掛けるようになりました。CDが売れない時代のなかで、レコードメーカーとしてもアイドルとアニソン枠はとても貴重なポジションとなっていったんです」

 そう話すのは、音楽評論家で日本初のアニソン専門雑誌『アニソンマガジン』や『リスアニ!』企画立案者の1人としても知られる冨田明宏さん。

「日本の深夜アニメを彩っている現在のアニソンシーンは、LiSAさんのようなアニソンアーティストもいますが、水樹奈々さんのような声優アーティスト、そしてUNISON SQUARE GARDENやBUMP OF CHICKEN、L'Arc~en~Ciel、RADWIMPSなど非常に広範です。意外なところでは、Mr.Childrenや桑田佳祐さんもアニソンを手掛けていますし、言わずもがな米津玄師さん、あいみょんさんもアニソンを歌っています。

 今や若年層から大人層まで幅広い年代にアプローチすることができるため、人気アーティストであればあるほどアニソンとは切っても切れない関係性になっていると言えるかもしれません」(冨田さん、以下同)