ここのところ、唐沢は「海外ドラマ原作」という呪縛にとらわれている。2019年はアメリカの原作『グッドワイフ』(TBS)と、韓国の原作『ボイス 110緊急指令室』(日テレ)に出演。どちらも原作の人気は高く、評判もすこぶるよかった。

 数年前からNetflixやAmazonプライムなどの契約者が増え、海外ドラマも新作から古典まで手軽に見られる。「制約をうけた中途半端な日本版を観るくらいなら、面白い原作を見る」人が増えている中で、あえて挑む「無鉄砲」。唐沢にもその気質があるのだろう。厳しい状況にあえて自分を追い込む、みたいなことを本人も述べていたので、イヤイヤ徴兵されたのではなく志願兵だとわかる。

 それにしたって一世を風靡した古典名作のリメイクは難しい。時代に関係なく、普遍性のある人間ドラマならばまだしも、勢いと臨場感と時間制限という特性のある『24』は、原作に忠実にすれば既視感、オリジナル要素を加えれば蛇足と言われる。残念ながら今期は「視聴率爆死ドラマ」に認定されてしまった。この責任は主演の唐沢ひとりが背負わされるものではない。テレビ局がなんとかしないとね。

 そういえば、織田裕二もフジで『SUITS』をやっていた。しかもシーズン2まで。あっちはあっちで「軽妙洒脱なエリート弁護士モノ」のはずが「友近&なだぎ武臭のするシチュエーションコメディー」に成り下がってしまったという問題を抱えており、海外ドラマ原作には高くて大きな壁があるのだと改めて痛感。

「適役」に恵まれた90年代から2000年代

 話を唐沢寿明に戻そう。今は「海外ドラマ原作でうっかりとばっちり期」だが、歴史をさかのぼると彼の魅力を再発見できるはずだ。「唐沢と言えばどのドラマ?」の問いに、必ず登場するのが『愛という名のもとに』(1992年・フジ)である。

 政治家の息子だが誠実な人柄で、親友・チョロ(中野英雄)からは「一点の曇りもない憧れの存在」と慕われる。「涼しげで黒目がち」の目は、確かに適役だった。

 90年代の唐沢は、恋愛至上主義のフジテレビでかなりの活躍を見せた。カタブツエリートや正義の味方を演じる一方で、やさぐれたお調子者という役どころも淡々とこなした。何でもできるマルチ俳優であると同時に、器用貧乏のイメージもある。