自死や事故死の場合も

 人は誰でもいつかは死を迎えるが、必ずしも年齢順にあちらの世界へと旅立つわけではない。真保さんは、事件や事故といった不慮の出来事に遭遇した故人に処置を施すこともある。

納棺師の仕事に使う化粧品やメイク道具。市販の化粧品やブラシ等を組み合わせて自分専用のセットを作っているのだそう(写真提供/真保健児さん)
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たとえば、お顔が欠損している場合は人工的なもので補ったり、裂けている場合は縫い合わせて縫い跡をメイクで隠したりと、できるだけ元のお顔に近い形に復元するように最大限の努力をします。

 ただ、正直なところ、ご遺族様の反応にはさまざまなものがあります」
 
 事故などで亡くなった場合、警察は家族にご遺体のお顔を見せて本人かどうかの確認をする。ただし、あまりにも損傷がひどい場合、顔は見せずに服装や持ち物などで確認をとることもあるのだそうだ。

「前者の場合は、ご遺族様に感謝やご理解をいただけることもあります。ただ、後者の場合は、ご遺族様が覚えていらっしゃる故人様がそのまま戻ってくるのだろうと期待されている分、亡くなられて初めて対面したときに愕然とされる方もいらっしゃいます
 
 日々、死と向き合う業務に誠心誠意、取り組むためには、精神面を含めた体調管理が欠かせない。

「身体はもちろん心も意識して休ませるようにしています。普段、気を張っている分、なにもせずにぼんやりと過ごすことが一番の休養になりますね。時には4歳の息子を公園に遊びに連れて行ったりして、親父面をしたりもします(笑)」
 
 今後の大きな目標のひとつは、エンバーミングの認知度を高めることなのだという。

エンバーミングは戦争由来の技術といわれており、有事の際にご遺体を祖国へ帰すための手段でもあるんです。アメリカなどでは軍隊にエンバーマーが同行しますし、先進国のほとんどはサミットなどの国際会議の際にエンバーマーを含む葬送関連の人員が組織されています。

 日本ではまだまだエンバーミングの認知度が低く、法律も整備されていません。ご家族様のお気持ちが癒され、納得のいくお別れができる選択肢のひとつとして、多くの方にエンバーミングのことを知っていただきたいと願っています。また、グリーフケアの業界は人手不足の側面があるため、コロナ禍の今、新しい分野のお仕事を検討されている方に少しでも興味を持っていただければと思っています」

ディーサポート代表 真保健児さん 撮影/齋藤周造

<プロフィール>
ディーサポート代表・真保健児さん


 新潟県新潟市出身。医療器械の営業職を約10年経験する中で遺族ケアに関心を持ち、31歳の時から2年間、エンバーマー養成施設で研修を受け、日本で62番目に資格を取得。エンバーミング業務と並行して葬儀等のノウハウを学び、2011年5月にディーサポートを設立。

・株式会社ディーサポート

エンバーミング、修復、復元処置、メイク等のご遺体の保全処置、納棺・海外搬送関連業務、葬儀実行や葬儀相談業務など、葬送に関わる一連の流れをマルチで請け負う。24時間体制で心を込めた葬送サポートを行っている。公式サイト http://www.dignity-support.jp