身体に触れ、言葉がふっと入ってくるケア

 また同じころ、白十字訪問看護ステーションで秋山さんと出会った看護師の服部絵美さんは、現在、白十字訪問看護ステーションの所長を務めている。

2003年、私は看護大学の4年生で地域で働きたいと担当の先生に伝えたら、白十字訪問看護ステーションを紹介されたことがきっかけでした」(服部さん)

 面接に行くと、その日のうちに「訪問看護に同行しない?」と、秋山さんに声をかけられた。大学病院で働いていると、医師の指示に従って決められたとおりに動くのが看護師の仕事。しかし秋山さんは、看護師としての判断を医師に伝え、同意をとり、そのケアを施す。よりよいケアを追求する姿に、服部さんは刺激を受けた。

 秋山さんは、手を使ったケアがとても上手だという。

秋山さんは、患者さんに触れながらお話をするんですが、言葉がふっと身体に入っていくように見えるんです職人のよう当時20代だった私にはできないな、と思いましたその技術を盗ませていただくには、どうしたらいいだろう、と考えながら同行していました」(服部さん)

服部さん(写真右)は、秋山さんの職人のようなケアに目を見張る
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 服部さんには、印象に残る秋山さんのケアがある。訪問看護をし始めたばかりで、102歳の高齢の女性を受け持っていた服部さんは、在宅の看取りの経験もなかった。女性は、老衰で食事もできず、熱で苦しんでいた。

 病院だと、血圧が低くなってしまったら解熱剤は使わないしかし、亡くなる間際に、秋山さんはさっと来て、高熱で苦しむ女性と、看取る家族のつらそうな面持ちを見ると、すぐに医師に連絡をとり、座薬の解熱剤を使った

最期は、その解熱剤のおかげで、穏やかに亡くなられたんですご家族も、“老衰で大往生だよね”とご本人の最期の迎え方、ご家族がどう思うか、ということを秋山さんは大切にしていました

 その経験が、次の家族へとつながっていく。家での看取りを希望すれば、かなえられる地域にしていく、ということを大切にされているんです」

 その一方、「看護業界で秋山さんはカリスマ的存在だけど、ちょっと抜けているところもあって、人間味あふれているから、惹きつけられる」と、服部さんは微笑む。

 もうひとり、服部さんと同じころに秋山さんと知り合ったのが、看護師の秦実千代さんだ。出会いのきっかけは、秋山さんの講演会だった。

 講演後、感銘を受けた秦さんは、秋山さんのもとへ話をしに行った。「何をやっているの?」と尋ねられ、当時、非常勤の看護教員をしていた秦さんはそう告げ、連絡先を渡した。1週間後、秋山さんから直接電話があった。

「難病の方が、毎日訪問が必要で、1日だけでもいいから、勉強にもなるから、やってみませんか?」と。そこから秦さんは、秋山さんと一緒に訪問看護の現場へ入っていった。

右から、秦さんと秋山さん。出会いは秋山さんの講演会だった

 もう20年前だが、「貴重な経験だった」と秦さん。今で言う「退院調整」(入院中の状況を訪問看護で生かすため、入院先を訪れて医師や看護師から話を聞くこと)もすでに行っており「一緒に、病院に利用者さんのことを聞きにいこう」と誘われたこともある。

 また当時、秋山さんは短パンとTシャツ姿でケアに入ることもあった。

秋山さんは、入浴介助も、小さな自分の身体を上手に使ってやるんです本当に心のこもったきれいなケアがんの方の家での看取りも、緊張している方の身体にふっと触れて、ほぐす感じそれに秋山さんの言葉って、内側からあふれ出てくるようで、いつも感動するんです