「財産の所有状況をいちばんよくわかっているのは被相続人自身。ここでいえば波平です。無用な争いを防ぐためにぜひ『遺言書』の作成をおすすめします」

 相続後の調査に無駄な費用や労力を費やさないために、「財産目録」も合わせて作成しておこう。

【コラム】サザエ「お父さんの預金が下ろせない!?」

 銀行や郵便局などの金融機関は、被相続人が死亡した事実を知ると、その時点で被相続人名義の預貯金口座を閉鎖、凍結します。以後は預貯金の入出金や公共料金などの引き落としができなくなります。

 サザエがフネに頼まれて波平の口座からお金を下ろしたい……。そんなときは、銀行に必要な手続きを踏まえて相続人であることを証明し、相続分の預貯金の払い戻しの請求をする必要があります。

(2018年7月の相続法改正により、遺産分割前に相続分の預貯金の一部払い戻しができるように。預貯金の一定割合については、家庭裁判所の判断を経ずに銀行の窓口で支払いを受けられるようになりました。ただし、銀行は原則として「法定相続人全員」による払戻請求を求めてきます)

【コラム】波平の生命保険金を受け取るのは誰?

 保険金は、「受取人が誰になっているか」がポイント。

 サザエが波平の遺産を「相続放棄」したとして考えてみましょう。この場合、受取人が波平自身の場合、生命保険金は被相続人の相続財産に含まれるため、相続を放棄したサザエは受領できません。

 ですが、「受取人はサザエ」「受取人は相続人」になっている場合、生命保険金は相続財産に含まれず、相続人固有の財産とみなされるため、相続放棄とは無関係に受け取れます。波平に多額の借金があったとしても、この方法ならサザエに財産を残すことが可能です。

 また、サザエが相続放棄をせず、生命保険金の受け取りがサザエに指定されていた場合は、サザエは法定相続分に加えて生命保険金も受け取れることに。

 

(構成/長谷川英子)

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《PROFILE》
弁護士・税理士/長谷川裕雅 ◎早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。弁護士が扱う遺産分割から税理士が扱う相続税対策まで、相続問題を総合的に解決する相続分野の第一人者。『老後をリッチにする家じまい』(イースト・プレス)など著書も多数。