出所後、別の女性と交際したが1年後に突然、「別れたい」。電話は着信拒否され、メールやLINEもブロックされ、音信不通になった。

「彼女と話したい」という思いを残しつつも問題解決ができないことを悟ったため、性依存症者の治療をするクリニックを受診。主治医から行動はしていないが、考え方はストーカーだと言われた。

 カウンセリングや治療を続けても状態は改善されない。友人から「次の恋愛に向けばいい」とアドバイスされた。

 その後、知り合った女性と2年前に結婚、子どもも生まれた。妻はサトシさんがストーカー体質であることを知っている。しかし、最近になって妻から離婚届を突きつけられた。Bさんへの恋心が再燃してしまったからだ。

「妻は生活のパートナーとしてはよい相手です。しかし、恋愛対象はBさん。彼女を忘れるために結婚をしましたが、彼女のことばかりが思い浮かんでしまうんです……」

恋愛のスイッチバグ、誰でもストーカーに

 ストーカー加害者の支援活動を行う守屋さんも実は元ストーカーだった。28歳から48歳までで合計6件の加害行為を経験しているのだ。その間、自身も結婚している。

「ストーカーの心理状態は対象の人物(女性)から見捨てられることをひどく怖がる。だから意中の相手から温かいメールが来るまで、何度もメールを打ち続けてしまう。反応があれば成功体験になり、ストーカー行為はエスカレートします」(以下、守屋さん)

守屋秀勝さん。守屋さんへの相談の7割が加害者、3割が被害者。30〜40代が中心。加害女性からの相談もある
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 守屋さん自身もSNSや電話などを1日200〜300回繰り返したことがあった。

 警察に介入されて、ようやく、加害行為が止まった。ストーカー規制法違反で警視庁から書面警告を受けたのだ。

「会えないことが苦しいので入院先を探しました。被害者へのサポートやカウンセリングは多いのですが、加害者の更生サポートは皆無に等しかった。入院中に考えたのは、ストーカー加害者が納得して治療を進められるサポート団体を作ること。自分のような当事者がまずは回復をしなければならないと思いました」

 だが退院後に自暴自棄で「意中の相手を殺して楽になるか、更生を自分の力でするか」と考えていたこともある。

 選んだのは更生の道だ。

 心理学を学ぶと「いつまでも彼女に執着しているのはダメだ」と目の前が明るくなった。定職にもつき、'16年4月から、精神科医らとも連携しながら現在の活動を始めた。

 守屋さんによるとこれまでのケースのストーカーは分類ができるという。

 美奈子さんのケースは'13年10月8日に東京・三鷹市で起きた別れた女性を殺害した事件のような「破綻型」に近い。サトシさんや守屋さんは相思相愛の恋愛感情を期待する「妄想型」にあたる。恋愛のスイッチが歪めば誰でもストーカーになりかねない。だが、社会復帰はできる。

「適切な医療機関などで治療をしましょう。ストーカーは家族に見捨てられることが最大の恐怖なので、夫や家族がストーカー行為をしていたことがわかっても責めてはいけません。話を聞きましょう」

 大切なのは加害者が自らの罪を見つめ、反省すること。

「その身勝手な行為が被害者に一生消えない深い心の傷を負わせたことを自覚。贖罪と回復のための行動を起こさなければストーカーの悲劇は社会からなくなりません」


守屋秀勝さん 任意団体『ストーカーリカバリーサポート』代表。自らも元ストーカー加害者。被害者への贖罪の思いもあり、医療機関などと連携し、加害者の更生に関する業務を担う。メディアなどへの出演も多数

《取材・文/渋井哲也》