「これで本籍がなくなったということですからね。次の改編の9月、もしくは来年4月が、加藤にとってのXデーということになると思いますよ」

 日本テレビ系情報番組『スッキリ!』関係者がそんな解説を加える、極楽とんぼ・加藤浩次(51)と吉本興業との決別劇。

 9日、同社の公式サイトで、加藤とのエージェント契約を今月31日をもって終了すると発表した。

 加藤は、吉本所属芸人による闇営業問題発覚後の2019年10月1日付で、これまでの所属タレントの関係を解消し「専属エージェント契約」を締結していた。

「それでも世間の認識は、加藤=よしもと芸人でした。テレビ局の認識もそうでした。ギャラの振り込み先がよしもとなんですから。ただエージェント契約が終わるということで、加藤は正真正銘、個人事務所のタレントになった。よしともという大きな傘がなくなったということです」(前出・日テレ関係者)

「加藤の乱」吉本上層部の不快感は相当なもだった

 振り返れば、予兆はあった。

 加藤がMCを務めるテレビ番組『この差って何ですか?』と『スーパーサッカー』(共にTBS)が3月で終了することになっていたからだ。さらに、前出の関係者が続ける。

「吉本はジャニーズと違って、同時間帯に所属タレントの出演が被らないようになど、“裏番組”をあまり気にしない事務所でしたが、『グッとラック!』(TBS系)の後番組のMCを麒麟の川島明にしたのには驚きました。まさか加藤がMCをやっている裏番組にぶつけてくるとはね。でも、今回のこの件で納得です

 加藤は日テレの朝の情報番組『スッキリ!』のMCを担当しているが、その行方も冒頭の関係者の発言のように視界良好ではなくなったという。

「闇営業問題の際、世間のよしもと叩き、芸人叩きの空気に、加藤はそのまま乗ってしまった。メディアは“加藤の乱”なんて書きそやしました。少々、図に乗ってしまって、今の会長・社長の体制のままなら辞める、とまで言い切ったわけですから、吉本上層部の不快感は相当なものでしたよ。“加藤アレルギー”と言っていいほどでした。

 あれはテレビの発言としてはダメ。ラジオのノリというか、居酒屋で後輩芸人と話しているノリ、という感じでしたね」

 そう指摘するのはスポーツ紙担当記者だ。加藤がどんなに吠えようが吉本の会長・社長体制は結果的に闇営業問題をうまく収拾し、揺るぐことはなかった。

「吠えまくった加藤に対し、まあ冗談半分なんでしょうけど、大崎洋会長は『気に入らなかったらいつでも辞めていいから』って言っていたそうですからね。加藤に辞められて本当に困るのであれば、そんなことは言わない。かなり本気だったと思いますよ」(前出・スポーツ紙担当記者)

「エージェント契約」になったことで、加藤が得たものは「ないんと違いますか」と前吉本社員。「逆に事務所の維持費など持ち出しが増えた。取材対応や売り込みなど、吉本だから簡単そうにできたことも、自分ひとりじゃ大変。吉本という芸能資源を、明石家さんまやダウンタウンのようにうまく生かせばよかったんですけどね」と続ける。

 さんまにしても、ダウンタウンにしても、電波を使って吉本興業を決定的に批判することはしない。

「そういった手練手管というか、戦略が加藤にはなかったということ。年齢的にも51歳で、これから下の世代の芸人たちの猛烈な突き上げにあう50代という時代を生きなければならない。吉本が潰すなんてことはないでしょうけど、吉本が加藤を売り込むことはしない、ということだけは確か。加藤の番組の裏に、吉本の芸人が入れば、それは吉本が売り込んだ、ということですから、両者の今後は引き続き注目です」(前出・スポーツ紙記者)

 当面は、吉本時代に始まったテレビやラジオのレギュラー番組で食いつなぐことになるが、『スッキリ!』関係者が冒頭で指摘したように、改編の時期のひんやり感が加藤にのしかかる。

 その『スッキリ!』も、4月からフジテレビでは、『とくダネ!』の後継番組として谷原章介(48)がMCを務める『めざまし8』が始まるだけに、「番組上層部は危機感を持っていますよ」(前出・『スッキリ!』関係者)。

 後ろ盾を失った加藤のMC力で視聴率を弾き出し、個人事務所の営業力で新たなレギュラー番組を取ることができるか。

 芸人人生の正念場が始まる。

〈取材・文/薮入うらら〉