「縁がないことに執着しない」
爽子さん(仮名/神奈川県・42)

 某アパレルメーカーで広報として働く爽子さんは、4年前に5歳年下の夫と授かり婚をした。

「妊娠がわかって結婚して、すぐに流産しちゃったんですよ。こんなことを言ったら最低かもしれませんが、少しホッとしている自分がいてそのことに落ち込みました。自分は人でなしなんじゃないかって」

 夫とはそのまま婚姻関係を継続。

「実際に結婚してみると生活をシェアできる相手がいることに心地よさを感じたんです。家賃も生活費もシェアすることで多く貯蓄ができますし、こんなことならもっと早く結婚すればよかったと思いました。私自身、幼いころから結婚して子どもを産んでやっと一人前という古い家族観を持っていたので、子どもがいないのに結婚するという発想がありませんでした」

 爽子さんがその考えに至ったのに自身が育った家庭環境は影響したのだろうか?

「多少はあるかもしれません。ウチは機能不全家族に育って、両親は仲が悪かったのですが子どものために離婚しない、という感じで。子どもを理由にしていたけど、母は専業主婦だったので働いたり自立することが怖いことを子どものせいにしていただけじゃない? と子ども心に感じていてすごく嫌でした。子どもがいると自分の好きなように生きられないというイメージがついてしまったんですよね

 両親の不仲により、子どもを持つことをイメージできないのは夫も同じ考えだという。

「仲が悪いのに自分の存在で縛りつけているというのが心苦しかったようです。私も夫も古い価値観を壊したことでやっと自由になれたような気がします」

 と清々しい顔で語った爽子さん。この先子どもが欲しくなることもあるのでは? と問うと、

結婚してから特に避妊もしませんでした。それでも授からなかったということは縁がなかったということ。無理にあらがって手に入れたものって、やっぱりどこかで無理が出てくると思うんです。だから今まで子どもを授からなかったことが自分の自信になっています。私は産まなくてもいい、と神様に言われたんだ、と考えるようにしています」

 それでも過去の価値観と完全に訣別はできないという。

生物としての役目を果たしていないんじゃないか、と思ってしまうんです。命をつなぐことが人類の義務だという思いがどこかにあるんですよね。そんなときに政治家の失言を目にしたりすると少し落ち込みますね。40歳を過ぎて産める年齢でもなくなってきたことで楽になった。選択肢が残されていると迷いが生じますから」

 出産のリミットを超えて自由になれた、という爽子さんの表情は生き生きとしていた。

子どもを産める社会じゃない

「子どものいない40代女性は生きづらいです」

 そう話すのは前出の江藤さん。

「勝手にストーリーを作られてしまうんですよね。子どもを持つことを当たり前だと思っている人からしたら子どもを持たないということを選んだ人は何かしらの事情があって子どもを“産めなかった”ということにしたがる。

 そもそも子持ちと子ナシの対立構造だって男社会が作り上げたもの。そりゃ国としてみたら少子化は食い止めなければいけないのでしょうけれど、その前に子どもを産める社会ではないでしょう。少なくとも私はこの社会に子どもを産みたいとは思えません

 今や子どものいない女性の割合は3人に1人という社会。彼女たちの声はもはや少数派ではない。