わが国は、先進国の中でもワクチン接種開始が遅く、16歳以上の国民全員分のワクチンを2021年9月までに確保するメドをつけるには紆余曲折があった。前述の3社と供給契約を結んでいるものの、本稿執筆時点で実用化されているのはファイザー社製だけである。

 しかも、ファイザー社製のワクチンはベルギーからの輸入に依存している。アメリカ国内でのワクチン接種を優先的に進めるために、バイデン政権はワクチンに国防生産法を適用しており、アメリカから日本にワクチンは供給されていない。ましてや、日本国内では生産されていない。

基金を使い、ワクチン国内生産を支援

 日本政府はワクチンの国内生産体制の支援をおろそかにしているわけではない。研究開発と並行して生産体制を整備することで、供給開始までの期間を短縮することを狙いとして、2020年度第2次補正予算でワクチン生産体制等緊急整備基金を1377億円計上した。

 同基金は、国内外で開発されたワクチンを国内で生産・製剤化するための施設・設備等に対して企業に補助金を出している。武田薬品工業と提携してアメリカのノババックス社のワクチンを日本国内で年間2.5億回分生産する体制を構築する。その生産体制に301.4億円を補助した。

 ただ、ノババックス社製ワクチンは、2月から治験が始まったばかりで、本稿執筆時点で日本のワクチン接種計画に含まれていない。

 それ以外にアストラゼネカ社に対しても、ワクチン生産体制等緊急整備事業での財政支援を行うことになっており、国内生産に期待がかかる。ところが、アストラゼネカ社製のワクチンで接種後の血栓発生が諸外国で報告されており、日本国内で同社製ワクチンをどう接種するのか不透明になっている。