歌詞通りのヤンキー精神

 そんな世渡り上手なキャラの根っこには、ケンカ上等なヤンキー精神がある。高校入学3日後、バイクの無免許運転で停学処分になったというフミヤ。「15で不良」という『ギザギザ』の歌い出しを地で行く「悪ガキ」だったのだ。

 にもかかわらず、なぜ、高杢と本気のケンカをしなかったのか。実はデビュー4年目に、フミヤは音楽誌でこんな持論を披露している。「ペンの暴力と本当の暴力」を比較して、

「ペンの暴力って、人の将来を変えるでしょ」

 と、主張。「1か月くらいで治る」なら、

「俺、刺されたほうがいいもん」

 と、語っていた。つまり、それがヤンキーの流儀なのだ。幼なじみで同じようにヤンキーだったという高杢が「ペンの暴力」に訴えてきたことはその流儀に反しており、そういう土俵には上がりたくなかったのではないか。

 その結果、将来を変えられたのはむしろ高杢のほうだ。表舞台から消え、フミヤの“解禁”にも沈黙したまま。かつてのケンカ相手がわがもの顔で『ギザギザ』を歌う姿には複雑な思いだろう。

 ただ、世間のイメージは「チェッカーズ=フミヤ」だし、それは解散する前よりも強化されている。解散後もいろいろやってきた人と暴露本くらいしかなかった人の「格差」は哀しいほど広がってしまった──。

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PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。