たとえば、嵐の松本潤は若いころ、小栗旬らとの交友を通して、収入の違いに驚いたという。岡田の事務所も吉本やジャニーズのようなやり方だと思われ、彼はそうでない事務所との収入差にショックを受けたのかもしれない。まして、彼の事務所は歴史が浅く、功労者として長年面倒を見てもらっているような先輩もいない。

 また、彼と同学年にはヤクルトの4番・村上宗隆選手や西武のクローザー・平良海馬投手のようにプロ野球でバリバリ活躍して稼いでいる人もいる。違う世界とはいえ、自分もバリバリ活躍しているはずなのになぜ、という気持ちになっても不思議はない。

何事にも全力で……

 なお、これまでの発言を見ていると、彼は金銭面だけでなく、芝居についてもちゃんとしたいタイプであることがわかる。高校3年の夏に演劇をやって芝居の魅力に目覚めたことを振り返り、こんな話をしている。

なんともいえない感情になって、そのときの感情を言語化することが僕の今のひとつの目標でもあるので、それを追い求めてまた、挑戦していって、作品を通して感動や勇気を与えられるような人間になりたいなと思ってます」(『ノンストップ!』フジテレビ系)

 こういう人なので、作品にもとことんこだわりたいのだろう。前出の「人が変わってしまった」という見方は、そのこだわりが災いして「生意気」というイメージにつながったということかもしれない。

 問題は、そういうイメージが業界全体に広がってしまうことだ。彼に非がなかったとしても、売れてからまもない時期での所属をめぐるトラブルはリスクが高い。記憶に新しいところでは、女優・のんの例もある。契約期間中に独立したため、仕事を干され、能年玲奈からの改名を余儀なくされた。現在も地上波テレビでの活動には苦労している。

 だからこそ、岡田も裁判で決着をつけたいのだろう。ただ、理想をいえば、話し合いによる円満な独立が望ましい。事務所とは5年契約らしいので、まだ2年近くある。このままこじれると、俳優生命にも関わってきそうだ。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。